内容説明
埴輪の時代から現代にいたるまで、日本人と動物とのかかわりをずっと研究してきた著者。本書では日本人の動物観に影響を与えたさまざまな史実や文学作品を広く渉猟する。さらに、河童伝説の地を訪ね九州へ、あるいはタヌキとキツネの関係を探りに佐渡へと、足をのばす。日本のなつかしい風土へのレクイエムともいえるエッセイ集。
目次
日本人の動物観を探る
古代中世史のなかの動物たち
異郷に住む動物たち
固有名詞を持った動物たち
徳島県のタヌキ祠
佐渡タヌキの旅
佐渡の狢信仰
ウマの神性と魔性
ネズミの伝説・民話
鳥の妖怪
ムシの戦い
江戸時代の動物妖怪
西鶴と動物・器物の妖怪
筑後 河童の旅
筑豊 河童の旅
鏡花と潤一郎 狐の影
芥川の河童
宮澤賢治の動物観
著者等紹介
中村禎里[ナカムラテイリ]
1932年東京都に生まれる。1958年東京都立大学理学部卒。1967年以後立正大学講師・助教授・教授。2002年立正大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スイ
17
『そして中国において狸と表記され怪異をあらわす動物は、タヌキではなくヤマネコやジャコウネコであった。またそのため、日本ではタヌキとネコの混同が生じた。ネコが化ける理由は、この辺にある。』 そうなのー?!と引用部分でびっくり。 膨大な作品や記録(時には実際に旅して)を参照して語られる、動物との関わりから見る日本史はとても面白かった。 何で狐、狸、猫は化ける(ことになってる)のに、やはり身近にいたはずの犬や馬は化けないのか、すら考えたことなかった…もうちょっと考えて生きよう、と著者への敬意と共に思いました。2021/01/15
mittsko
3
日本宗教史の一環として拝読 ⇒ 科学史、生物学史の大家にして、日本人の動物観、生命観の研究を同時に重ねた中村先生 本書は動物観研究の最後の一冊で、単行本未収録の論文と随筆を集めたもの。こうした編集の性質上、重複するテーマ、題材は少なくない。各稿の長さも非常にまちまちだ。数あるご著書、ほかを落手していないが、本書はとても気軽に愉しく読めた。冒頭の概論「日本人の動物観を探る」は有益。個人的には、第3部所収の「ウマの神性と魔性」がおもしろかった。2017/11/20
ハイパー毛玉クリエイター⊿
0
日本人が動物をどうとらえてきたのか、古代から現代にわたるまで広く考察する一冊。 『今昔』を研究していた頃、狐がたくさん登場するのに対して、狸がまったく出てこないことに疑問を感じていたのだが、本書はタヌキについて深く取り上げてくださっていたので、興味深く、とても勉強になった。イノシシやムジナについても同様。また「ワニ」の話も面白かった。現代の視点から分類される特定の生物とは結びつけない概念。なるほど。 なお著者の中村禎里氏は生物学・生物史学者。文系の民俗学者でない。こんな学問ジャンルもあるんだね。2015/01/30