出版社内容情報
2006.11.12 読売新聞 書評
天空への妄想と神話
……十九世紀後半から二十世紀前半にかけて、シカゴやニューヨークを襲った摩天楼熱の背景には、技術論や様式論をこえた「欲望」の組織的動員があったことがよくわかる。その「神話的構造」が、行き届いた調査によってみごとに炙りだされている。……
内容説明
近代建築史においては、「高層の商業ビル」としてほとんど等閑視されてきたアメリカの超高層ビル、摩天楼。一九世紀末から二〇世紀初頭にかけて、熱帯雨林の突出木のように出現した摩天楼は、アメリカの富とビジネスの象徴であるとともに古来、聖なる山や宇宙樹、バベルの塔などに託してきた人類普遍の夢の象徴でもあった。「商業の大聖堂」を建てた百貨店王フランク・ウールワース、「世界最高にして世界の中心」の自社ビル建設をめざした新聞王ジョゼフ・ピュリッツアーなど、世俗の権力欲と霊的昂揚への憧憬のダイナミズムをあわせもつ摩天楼の魅力に迫る。
目次
序章 すばらしき摩天楼の時代
第1章 天空志向「摩天楼―革新か伝統か」
第2章 万物の復興、あるいは摩天楼の再興
第3章 聖なる摩天楼と世俗的な大聖堂
第4章 自然成長の神話―新聞ビジネスの夢
第5章 自然成長の神話2―アメリカ精神の伏流
著者等紹介
レーウェン,トーマス・ファン[レーウェン,トーマスファン][Leeuwen,Thomas van]
1941生まれ。ライデン大学教授として、長年にわたり建築史・文化史・芸術批評を講ずる。1971年にアメリカに渡り、ドキュメンタリーフィルムの制作スタッフやコロンビア大学の客員教授、ワシントンDCのナショナルギャラリー研究員などを歴任。アメリカ建築史のみならずヨーロッパ精神史全般にわたる該博な知識とジャンルにとらわれない軽快なフットワークにより多彩な活動を展開
三宅理一[ミヤケリイチ]
1948生まれ。1972年、東京大学工学部建築学科卒業。75年よりフランス政府給費留学生としてエコール・デ・ボザール、パリ=ソルボンヌ大学に留学。79年卒業。芝浦工業大学教授、リエージュ大学客員教授を経て99年より慶応義塾大学大学院政策メディア研究科教授。専門は、建築史、地域計画、デザイン理論で、文明論的な視点から世界各地で文化振興、遺産保護、地域振興等のプログラムを手がける。ルーマニア、中国での世界遺産保護、フィンランドのアートガーデン計画などを実施する一方、ポンピドーセンターやドイツ建築博物館、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム等で共同展示企画を実現
木下壽子[キノシタトシコ]
1969生まれ。1993年、日本女子大学家政学部住居学科卒業。芝浦工業大学大学院修士課程修了後、英国に留学。96年、ロンドン大学大学院修士課程を修了後、ロータリー財団国際親善奨学生としてグラスゴー大学マッキントッシュ建築学校で研究を行う。東京理科大学非常勤講師などを経て、現在、東京大学大学院工学系研究科松村研究室博士課程に在籍。研究、執筆、翻訳活動のかたわら、(株)アビターレ代表取締役として、集合住宅の企画・管理事業も推進(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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