内容説明
戦争には「前史」と「前夜」がある。日本の戦争指導者たちが踏み越えていった、数々の「point of no return(戦争回避不能な段階)」とは何か―日中戦争研究の第一人者による集大成!
目次
序章 戦争には「前史」と「前夜」がある
1 日本はいつから満州事変・日中戦争への道を歩みはじめたのか(一九一五年の対華二十一カ条要求;戦争「前史」の転換点となった一九二八年)
2 日本軍は「満州」で何をおこなったのか(関東軍の謀略により開始された満州事変;「満州国」の設立 ほか)
3 日中戦争はどのように準備されたか(二・二六事件と軍部強権政治体制の確立;陸軍の華北分離工作の推進 ほか)
4 日中戦争はどのように始まったか(盧溝橋事件から「北支事変」へ;海軍の謀略・大山事件から第二次上海事変へ ほか)
著者等紹介
笠原十九司[カサハラトクシ]
1944年群馬県生まれ。最終学歴:東京教育大学大学院修士課程文学研究科東洋史学専攻中退。学位:学術博士(東京大学)。職位:都留文科大学名誉教授。専門分野:中国近現代史、日中関係史、東アジア国際関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
27
日中戦争を対華21ヶ条要求から説き起こす姿勢には共感を覚える。ここから張作霖爆殺、満州事変、そして盧溝橋事件、第2次上海事変から南京占領までが上巻。読みやすく要領を得た説明はさすがと思う。軍部と天皇を中心に容赦なくその戦争責任を問う姿勢はこの著者らしい。ただ、いくつか引っかかる点も。ひとつは第2次上海事変のきっかけとなった大山事件。著者はこれを海軍が北支事変を華中・華南という自分の守備範囲に広げるための謀略と断じるが、そこまで言い切れるのだろうか。論拠を十分に示さず他の自著を読めというのもちょっとねぇ。2018/12/14
樋口佳之
23
戦争には「前史」と「前夜」がある。/前史というと226の処分で予備役になった者を前線にというのも理解し難い。統制を乱した前歴があるということでしょう。出先の暴走を警戒するという意識があったのだろうか。/条約派 艦隊派いずれも大海軍主義において変わらず、日中全面戦争への前夜はむしろ海軍主導/対華21か条要求から南京占領まで22年の記述。一冊の本になるような事件が多数触れられていて、そこが長短半ばしている気がしました。2018/03/10
鯖
20
戦争には「前史」があり、戦争勃発の「前夜」になれば戦争の阻止は不可能となる。対華21か条要求から南京占領、パナイ事件までを扱った上巻。2.26の罪状として予備役とされた者を前線に送り込むってロシアのワグネルと一緒じゃんつうか、今のロシアやイスラエルって大日本帝国なんだよなと思わさせられた。パナイ事件も現地の大使館に特攻かけたようなものだし。現地の軍の独断と謀略を内閣と天皇が追認することが繰り返され泥沼に突入する日本軍。ともかく日本は米英ソのみならず中国にも敗戦したんだよなと当たり前のことを思い返す。2024/02/21
coolflat
18
戦争は突然勃発するのではなく、戦争へと進む「前史」があり、それがいよいよ戦争発動・開始の「前夜」の段階まで進むと、戦争を阻止することはほとんど不可能となり、謀略でも偶発的事件でも容易に戦争に突入すると言う。なぜ日本は、日中戦争、それに続く太平洋戦争へと突入し、破滅したのか。1915年の二十一か条の要求から1941年の真珠湾攻撃直前までの歴史において、政府・軍部・メディア・市井の人々がそれぞれの場面においてどういう選択をしたのか、違う選択肢を取り得たはずなのに、どうしてできなかったのか、その原因と理由を探る2019/11/18
Michael S.
10
日中戦争の実態は太平洋戦争ほど知られていない。(と思う。)歴史の時間にも詳しくは習わない。この本から私も今までの断片的な知識が整理されて対華二十一カ条要求から敗戦までが一気につながった。日本はアメリカに敗戦しただけでなく「中国へ侵略戦争をしてそして中国にも敗戦した」という歴史認識が重要だと思う。余談だが実家の墓所には戦死者の墓がいくつかある。死んだ場所が中国の地名であるものがいくつかあり、「太平洋で戦争していたのに?」と子どもの頃は違和感がありましたが今ははっきり理由がわかる。必読書。オススメ。 2019/07/15