内容説明
社会現象にまでなったアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を読み解くための基本文献。庵野秀明監督への超ロング・インタビュー、制作スタッフたちによる未発表「庵野秀明“欠席裁判”座談会」前編を含む第一集。
目次
第1部 庵野秀明 ロングインタビュー(僕たちには何もない;物語の終わらせ方;創作とはオナニーショウである;「デビルマン」とエディプス・コンプレックス)
第2部 『エヴァンゲリオン』スタッフによる庵野秀明“欠席裁判”
第3部 綾波レイとは何か?(大泉実成)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白義
20
エヴァンゲリオンを産むに至るまでの庵野監督と周囲の流れを知る上で貴重な情報が多い。巨大なリアリティーを感じる時代経験がないゆえのバーチャルな世界への耽溺とそんな自己へのメタ言及と批判、閉塞からの脱出。物議を醸したTV版ラスト二話に至る思想的な必然性が読み取れるが、そんな言葉では片付けようがない、地獄的なスケジュールが関係者座談会からも読み取れて、切迫した状況の狂気と庵野監督という個人の狂気が重なったところで前衛的に破綻したというある意味エヴァ本編とパラレルな裏側を感じさせて超面白い2015/04/13
しゅん
12
エヴァアニメ終了後、旧劇前の庵野秀明インタビューと主要関係者の座談会。冒頭のアニメファン批判はとても真っ当。また、僕がずっと考えていた「テレビにでてくる人(アニメキャラ含む)のほうが隣近所やクラスメイトより身近に感じる」という複製技術以降の現象に庵野秀明もこだわっているとわかったのはうれしい発見だった。編著の今泉さんの綾波への思い入れが大変に強く、そうだよな、この頃は綾波の存在感圧倒的だったよなと、懐かしい気持ちになった。座談会では庵野のキレる人っぷりが語られている。2021/04/08
またの名
10
強力な磁場を生み出してるために言及するとその圏域に巻き込まれてしまう事物が時々あって、そんな作品の一つ『エヴァ』の楽屋裏が覗ける対談。オリジナルな創作も言語活動も不可能になった時代に発揮できる個性は自分を通して編み上げたコラージュだけ、という価値観を抱きつつ作った物語に監督自ら与える形容は、見た人の投射が返ってくるような鏡。精神分析用語を交えて語られる話と下世話なぶっちゃけが混ぜ合わさったトークが読者を幻惑し、第三部の非実在少女崇拝妄想ポエムは一視聴者の気持ちを投射し過ぎて果てしないキモさに磨きがかかる。2016/11/30
daiyuuki
8
庵野秀明とのロングインタビューでは、エヴァンゲリオン製作中にアニメファンの的外れな批評にうんざりしたとか、庵野秀明が「ウルトラマン」や「デビルマン」などからどのように影響を受けたとか、庵野秀明が自分を含めたテレビ依存についての考えなど赤裸々に語っています。漫画版エヴァンゲリオンの作者の貞本たちの庵野秀明欠席裁判も、庵野秀明の素顔が知れて、面白かったです。2014/11/20
Yasomi Mori
7
テレビシリーズ終了直後、庵野監督ら製作スタッフに対するインタビュー集の前編。90年代の中高生時代に読んではいるはずだが、当時はまったく読解力なく記憶皆無。オウム真理教との同時代性に関する明確な意識があったという内容。戦争というリアルな極限状態の共通体験をもつ親世代に対し、自分たちは平和でテレビが共通言語になった世代。親世代のいう「大人」像がもはや説得力を失い、大人になれなくなってしまった。そこで戦後をやり直そうと考えたのがオウム。その意味で、オウムとエヴァは「親子関係の崩壊」という時代性を共にしていると。2021/08/01