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庭師 ただそこにいるだけの人

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  • サイズ B6判/ページ数 180p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784870316577
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

主人公のチャンスは孤児である。生まれてすぐ偶然にも大富豪に拾われ、庭師として育て上げられた。屋敷と庭から一歩も外に出たことがない。学校にも通ったことがない。読み書きもできない。庭仕事をしている以外は、ひたすらテレビを見ている。ところがある冬の日、主人が死んでしまい、生まれて初めて外の世界に出ることに…。童話のような、寓話のようなおかしなおかしな一週間の物語。映画『チャンス』の原作、27年ぶりに新訳で復刊。

著者等紹介

コジンスキー,ジャージ[コジンスキー,ジャージ][Kosinski,Jerzy N.]
1933年ポーランド生まれ。両親はロシア革命時の亡命ユダヤ人。第二次世界大戦勃発とともに両親と別れ、浮浪児として生き永らえる。戦後、両親と再会。成績はきわめて優秀で、大学で歴史と政治学を学んだ後、ソビエトへの留学も果たしている。若くしてポーランド科学アカデミー教授に就任するも、1957年にほとんど無一文で米国に亡命。3年後、コロンビア大学在学中に作家デビュー。1991年、57歳のときマンハッタンの自宅の風呂場でビニールの袋を被ったまま窒息死。遺書があり、自殺とされた。死の前後に複数の雑誌や新聞で彼とCIAとの関係や、実は多くの作品がゴーストライターによるものだったのではないかなどと報じられた。『庭師 ただそこにいるだけの人』は1979年に『チャンス』というタイトルで映画化され、主演のピーター・セラーズはオスカー賞を受賞し、コジンスキーはアメリカ作家協会とイギリス映画・テレビ芸術アカデミーから年間最優秀脚本賞を授与された。その他の作品に『異境』(1969年、全米図書賞・小説部門)などがある

高橋啓[タカハシケイ]
1953年北海道生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、出版社勤務。1980年、アルジェリアでの日本資本のプラント建設現場に通訳兼コーディネーターとして参加、1年半を過ごす。帰国後、ビジネス文書の翻訳をしながら、徐々に仏文翻訳家としての活動に専念。近年は英文翻訳家としても活躍
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

178
主人の死によって解雇され、路頭に迷っていた庭師のチャンスが、それからわずか1週間で大統領候補になってしまうお話ープロットを聞くと、なんとも荒唐無稽な小説。スピード感は優秀で、文字通り読者に息つく暇を与えない。物語の構造とすれば、極度にナイーフな主人公を設定することで、社会の常識の歪みを炙り出していくというもの。ニューヨーク・ポストの書評をはじめとして、アメリカでの評価は高いようだが、娯楽映画(映画化もされている)としてはともかく、小説としてはいささか深みに欠けるだろう。斬新というよりは、単純というべきか。2014/11/18

かんやん

36
原題Being there。(ただ)そこにいる(だけ)。幼い頃屋敷に引き取られたチャンスは、庭師として働き、外の世界へ一歩も出ることのなかった頭の弱い男だ。ただTVを通してのみ外界と通じていた。ある日、主人が亡くなり、無一文のまま外に放り出された彼は、ひょんなことから財界の大立者の豪邸に引き取られて…。夢も野心も欲望すらないチャンス(ただTVを観ることだけが好き)が、ただそこにいるだけで、人々を魅了し、大旋風を巻き起こす。もちろん、それは徹底的に誤解に基づくから、ハートフルコメディではなく、風刺である。→2020/01/24

キジネコ

33
豊かな示唆に満ちた寓話的物語。主人公は バイ・チャンス・ガードナー。偶然の庭師、天使の様な無垢の男。読み書きもできず、一つの庭の外の世界をテレビでしか知るすべのなかった男、土と植栽が全てだった男が庇護者の死により 守られていた垣根を失います。世界中が、時の権力者達が、経済を牛耳る大物達が、そして女達が、この「記録のない男」の出現をめぐり 微笑ましい勘違いに巻き込まれてゆきます。予想できなかったエンデイングに一旦首を傾げますが余韻は納得を読者に与えます。作家の生涯の謎と相まって奥行に魅力たっぷりの一冊です。2014/02/12

星落秋風五丈原

32
皆何者かになりたくて、日々努力している現代において、チャンスだけは「ありのまま(=Being There)」でいる事が無条件で許される。いや、むしろ賞賛される。社会的責任に雁字搦めになり、常に変化を求められる人々にとっては、チャンスはまさに理想の人物だ。 単純なものを、わざと複雑に考えて、侃々諤々の人々。その脇をすり抜けて、最もシンプルなチャンスが、誰一人届かぬ場所へ行く。そんな奇跡があるんだろうかと、ふと思ったが、著者の経歴を見て驚く。なぁるほど、事実は小説よりも奇なりだったか。2005/05/25

ネムル

14
社会から隔絶された孤児が多くを語らず、謎めいた風貌で偶然に成り上がってしまう話なので、小泉進次郎はこの作品に学ぶべき。冷戦下の60年代アメリカを舞台に、分断の進む社会へのシニカルな目線がコシンスキーらしいが、しかしそれも微温的な程度である。まあつまらなくはない、がいま読むに妥当な評価かと。2020/10/20

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