出版社内容情報
鉛筆での表現をひとつの芸術作品に結晶させ、鉛筆画の世界を切り拓いた画家、初の自伝!
人間存在の意味とは何か、私はなぜ生きるか。芸術とは何か。
ハンセン病元患者、瞽女、パーキンソン病を患う我が妻……
極限を超えた存在は、最も美しく、最も魂を打つ。
彼らを描くモノクロームの鉛筆画の徹底したリアリズムから溢れ出す、人間への愛。
極貧と放浪の少年時代から現在までを語り尽くす。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
としき
3
”老い”と”病”いま我々が抱える社会問題。このテーマに木下氏は鉛筆一本、それも黒と白のモノトーンだけで立ち向かっている。私達は知らず知らずのうちに弱者に向き合うのではなく差別している。誰もが老いていく自分、病に冒されている自分を受け入れることが出来ない。でも、彼のモデルとなった瞽女の小林ハルさん、ハンセン病患者の桜井哲夫さんは、それら全てを受け止めている。その力強さを表現したいのだろう。これ程、真摯に自分に向き合えるものだろうか?彼にとって芸術とは生きるための糧ではなく、まさにいのちを刻むことなのだろう。2020/03/01
のせなーだ
1
迫る鉛筆力による、深い多くのしわ、写真では伝わらない「老い」の重さ、深さがその人生にまで入るようだ。 小林ハルさんの子供時代からの辛苦の人生は、何度でも、新たに衝撃を受ける。より愛情と手をかけたかった小さな子供を厳しい世界に手放した母親のことも胸を締め付けられる。地域での野辺送りを思う。2021/01/23
じゃますけ2
0
口絵の作品に心を奪われる。見てはならないものを見た、あるいは見させられた思いになる。対象を極限まで追求する木下晋氏の粘り強さ、心の持ち方が作品に表わされている。鉛筆画を描くことで、作者自身が余人には容易に近づくことができない境地にたどり着いていることを感じる。レンブラントは油絵の自画像によって自己を見つめ直したが、木下晋氏は小林ハルさんや桜井哲夫氏らを鉛筆画として描くことで、生きるということ自体を大変丁寧に描き切っている。そして様々な人との交流でのエピソードは、作者の鉛筆画家以外の一面を伝えてくれている。2020/05/09
gua5113
0
鉛筆画家として既に孤高の存在であるが、その背景を自ら語ってくれた好著である。2020/03/06