内容説明
ニッポンジンはなにをし、なにをしなかったのか?おどろくべき「獣性」と「慈愛」をつないだ天皇。閉じられた記憶の棺をこじあけたら、おどりでてきたものとは?歴史にわだかまる大いなる恥と責任を体内深くに問い、「1★9★3★7」から今日まで、連綿とつづく「ニッポンの妖気」を射る。戦後思想史上、最大の問題作!
目次
いま記憶の「墓をあばく」ことについて
序章 よみがえる亡霊
第1章 屍体のスペクタクル
第2章 非道徳的道徳国家の所業
第3章 かき消えた「なぜ?」
第4章 静謐と癇症
第5章 ファシストと「脂瞼」
第6章 過去のなかの未来
第7章 コノオドロクベキジタイハナニヲ?
終章 未来に過去がやってくる
著者等紹介
辺見庸[ヘンミヨウ]
1944年宮城県石巻市生まれ。70年、共同通信社入社。北京特派員、ハノイ支局長、外信部次長、編集委員などを経て、96年退社。78年、中国報道で日本新聞協会賞、87年、中国から国外退去処分を受ける。91年、小説『自動起床装置』(文藝春秋刊、文春文庫、新風舎文庫)で芥川賞、94年、『もの食う人びと』(共同通信社刊、角川文庫)で講談社ノンフィクション賞、2011年、詩文集『生首』(毎日新聞社)で中原中也賞、2012年、詩集『眼の海』(毎日新聞社)で高見順賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころりんぱ
53
いつも読みやすい本を読んでいるからだろうか、こんなに読むのに難儀した本はなかった。著者の頭の中にあるモヤモヤ、ドロドロ、グルグルの沼に半ば怯えつつ足を踏み入れたら、ずぶずぶとの深みにはまって、どうにも身動きが取れなくなった。1937は盧溝橋事件、南京大虐殺の年。『時間』という小説を紐解きながら、「あなたは何をし、何をしなかったのか」と父親をはじめとする日本人に問う。著者の言いたいことが静かな怒りとともに溢れ出てくる。私は本当のことが知りたい。なのに、本当のことって読むたびわからなくなる。2016/02/06
おさむ
41
「従軍した父は中国人を殺したのか?」。そんな疑問を抱えながらも直接問いただすことが出来なかった著者が、戦記や他の従軍体験者の言葉等を基に思考を重ねる。同時に突きつけられるのは「もし同じ立場に自分がいたらどうしたのか?」。戦争悪や時代のせいだけにすることはできないでしょう。今年は戦後70年。加害者こそ歴史を忘れてはならないと実感。2015/12/24
マムみかん(*感想は風まかせ*)
31
新聞で紹介されていたのに興味を引かれたのと、最近読み進めている『満州国演義』がちょうどこの辺りまできたので読んでみました。 う~ん…やっぱり辛い。 史実を無かったことにはできないし、ちゃんと知らなければいけないとは思います。 特に何やらキナ臭くなってきた今こそ、過去の歴史に学び、未来をイメージすることが大切ですね。 でも、こういう負の歴史を真正面から受け止めるのは、かなりの覚悟が必要。 私には、まだその覚悟が足りないみたいです…☆2016/03/16
みねたか
27
南京大虐殺について、犠牲者数の多寡が語られることが多いが,著者は、意味があるのは数値ではなく,犠牲者一人一人に人生や感情があること,また同じ人間がなぜ無差別に殺し、略奪し、手当たり次第に強姦したのかであると説く。さらに,自身が兵士として,更には言論人としてどのような行動をとり得たのかを自問する。戦後70年を経て,加害者としての記憶は継承されないまま,被害者の記憶だけが代をついで語られる現状には、今さらながら薄ら寒さを覚えた。まさしく圧倒的な書。日本人のメンタリティや日本の現状ついても考えさせられる。2016/08/05
yumiha
24
むごたらしい場面が悪夢を呼び寄せるだろうと、就寝前の本にしなかった。著者の父は、もうすぐ逝くことを分かっていて「スヌデ(死にたい)」とうわごとを繰り返し、「戦後も楽しくなかった」と切れ切れにつぶやいた。そんな父が中国で何をしてきたのか?もし自分がその場にいたらどうするだろう?日本人の底流にずっと流れ続けてきたものは?という問いを堀田善衛や武田泰淳などの作品を通して問う。「ああ、すべてが敵の悪、戦争の悪のせいだと言い切れるのだったら、どんなにいいだろう」のように、一人ひとりの在り方を問う。 2017/02/18