内容説明
人と人とが直接的に対峙し、向き合う、ケアや支援の現場。今日もまた、法制度や個々人の行為の限界を、掻い潜り、乗り越え、換骨奪胎するため、現場の人たちはミクロな「社会」を発見し、制度を新たに創り、そして明日を目指す。
目次
第1章 “場”の力―ケア行為という発想を超えて(“場”という発想;“場”の力の素描 ほか)
第2章 「優位に立つ」関係を弱める―支援か虐待かという問いの先へ(虐待防止というけれど;虐待は文脈に依存する(1)―行為の意味 ほか)
第3章 出会うということ―足湯ボランティアと被災者のつぶやきからみる素人の力(「何ができたか」よりも「どのように出会ったのか」;足湯ボランティアと書き取られたつぶやき ほか)
第4章 専門職と「ともに生きる」立場と―上田敏と障害者運動の対比からみえる異なるケア提供者像(上田敏をちゃんと読もう!;上田のいうリハビリテーション医学 ほか)
補遺 あのころの私に(「この程度なんだ」;分断と世代と ほか)
著者等紹介
三井さよ[ミツイサヨ]
1973年石川県生まれ。2003年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了(博士(社会学))。2004年から法政大学社会学部教員、現在は同学部教授。雑誌『支援』の編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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そね
2
どの事例を見てもうちの地域にもあればなぁと思うものばかりだった。施設職員の立場から見ると、声を上げて運動したり事業を立ち上げる人達がいるから地域で自立して生活することが出来るんだなと改めて思った。決められた型通りに行う福祉も必要だがそれだけで充実するわけではない。サービスや制度として利用出来ないけど必要であると気づき、動き模索していくことはこれからも続けていかなければならいと思う。虐待の定義や育児に対する男女の考えの違い等表出しにくいものに対してちゃんと向き合っていて興味深かった。2022/11/20
ryoko
1
障害者の自立生活運動が参照されていること、医療・福祉や倫理・哲学といった領域ではなく社会学の視点に立って論じられていること、が今まで読んできたケア論関係の書物とはまた違っていておもしろかった。ともすれば個人と個人のかかわりかた(あるいは思想)、あるいは逆にシステムのありかたに帰着しがちに(私には)感じられてきた「ケア」の話に、「場」という視点がもちこまれると、窮屈さが少し和らぐ感じがある。ただ、著者も指摘している「持続性」に加え、一般化標準化しづらいという問題はあるようにも思うし、難しい。2022/02/23