内容説明
戻ってこない過去でも、分からない未来でもなく「ひきこもっている今」を認めること。原因探しや変化を求めることから降りて、本人、家族が周りとの関係に悩みながら折り合っていく過程に伴走すること。「ひきこもり」を解決し関係を終結させることを目的化するのではなく、なによりも関係の継続を目指し大事にするソーシャルワーカーの実践の記録。
目次
第1章 問題の背景
第2章 家族との出会い―離れてみよう!「自立/依存」
第3章 本人との出会い―会ってみよう!「精神保健/生活」
第4章 本人と集団との出会いを応援する―やってみよう!「対人関係/興味」
第5章 本人と社会との出会いを応援する―続けてみよう!「責任/役割」
第6章 一〇代のひきこもりとの出会い―待ってみよう!
第7章 高年齢のひきこもりとの出会い―折り合ってみよう!
著者等紹介
芦沢茂喜[アシザワシゲキ]
ソーシャルワーカー(精神保健福祉士、社会福祉士)、第1号職場適応援助者(ジョブコーチ)。国際医療福祉大学医療福祉学部医療福祉学科卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科修士課程(社会福祉学)修了、信州大学大学院社会政策科学研究科修士課程(経済学)修了。山梨県内の民間精神科病院島での勤務を経て、山梨県庁に入庁(福祉職)。中北保健所峡北支所、精神保健福祉センター、峡東保健福祉事務所を経て、現在は中北保健福祉事務所に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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トラバーユ
5
この世にこんなにも他者に対して誠実な人がいることを知ってほしい。ひきこもり問題に関心が無い方でも読んでみる価値はあると思う。著者のようにただ継続的に側にいてくれる人がいるだけで救われるのがよくわかった。doingでなくbeingの大切さ。多分一生自分の胸に刻まれ続ける本だと思う。あと脳の中の主体性を司る部分に関しても勉強してみたいと思った。セルフネグレクトと主体性の関係性。2019/02/11
saiikitogohu
3
「『ひきこもり』とは問題なのか?…問題とは、『私(達)が考えていること』と『相手が考えていること』との間のズレであり、人や機関などとの間で折り合いがつけられなくなったときに生じる…ひきこもるという行動が、家族や周りと折り合えなくなっていることが問題…本人はひきこもるという手段で、周りと折り合いをつけようとしている人であり、私は本人が周囲と折り合いをつける過程を一緒に悩み、伴走する人…落としどころを探していくことが重要」(7)「本人を動かす力は本人にしかない…私たちは…本人が動ける環境を整えること」(32)2018/11/30
あさぎ
1
誠実。こういう考え方が足場になっていってほしいと切に思う。引きこもっている人に介入できる人とは誰か。またその人はどう介入するのか。ひきこもるという行為、それに対峙するとき、気持ちはどのような方向に持っていけばいいのか。「相手を変えようとする限り、相手は抵抗し続ける」というのは重要。2021/11/04
たまぞう
0
著者はソーシャルワーカーとして多くのひきこもり事例の解決を図ろうとするが、事態が一向に進展しないことに悩んだあげく、「困っているのはひきこもっている本人ではなく支援しようとしている自分のほうだ」と思い至る。そしてその経験をさらに押し進め、「困っているのは誰か」という問いに結実させたところに、現場由来の説得力と優しい人柄を感じた。「折り合いをつける」「過去と未来よりも今」「動きがない/動きがある」「ゴールを決めない」など、本人・家族・支援者のいずれにとってもヒントとなりうる知見に満ちた、誠実な実践報告。2023/06/17
昌也
0
P10「本書ではひきこもりを主訴にした相談を全て「ひきこもり」として一括りに捉えました。 鷲田清一『対話の可能性』せんだいメディアテークのホームページよりhttps://www.smt.jpdialogues を引用。2021/02/19