内容説明
「手話を教育現場に導入してほしい」と望んできた当事者の主張は、なぜ聾教育の現場に反映されてこなかったのか?手話を自らの言語として生きる聾者は、「耳が聞こえない」存在としての聴覚障害者と同義ではない。手話を獲得し聾文化を体得して、聾者に「なる」のである。「聾者が聾者であること」の生命線とも言える、教育現場における手話の導入をめぐる意思決定のパワーポリティクスに焦点をあて、聾者にとっての手話の存否に関わる本質的問題に迫る。
目次
第1部 「手話」の社会的構成に関する分析(聾をめぐるディスコース空間―聾者・聴者間の文化的コンフリクト;会話場面にみる聾者と聴者の関係性の検討)
第2部 「聾教育」というディスコース空間(「手話・口話論争」の構造的把握;聾学校というディスコース空間;指導法におけるクレイムの方向性に関する分析)
第3部 言語獲得期における手話の使用をめぐる議論の分析(他学部教員からみた幼稚部に関するディスコースの検討;幼稚部部会における合意形成プロセス;A聾学校における「聴覚手話法」構築過程)
第4部 学齢期における手話の使用をめぐる議論の分析(聾学校における日本手話導入をめぐる議論の検討;通常学校における情報保障としての手脇通訳の可能性に関する検討;聾重複児への対応をめぐる手話の使用に関する検討)
第5部 高等教育機関における手話通訳の導入をめぐる議論の分析(大学における合意形成プロセスに見る「聴覚障害学生支援」の性質;財源の確保と情報技術の活用の陥穽;情報保障としての手話通訳の性格;G大学における「手話通訳」導入の構築過程)
著者等紹介
金澤貴之[カナザワタカユキ]
1971年生まれ。東京学芸大学、同大学院修士課程修了。筑波大学博士課程中途退学。筑波大学文部技官、同助手を経て、2000年4月から群馬大学教育学部障害児教育講座に講師として着任。2013年7月より教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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