内容説明
二〇一四年八月、著者は最期にあとがきをつづり、逝った。猫との暮らし、住んだ町、故郷、思い出の本、四季の手ざわり、そして、半島のこと…その全人生をふりかえる単行本未収録エッセイ集。
目次
1 猫と暮らして
2 都市という生き物
3 故郷のかおり
4 そこにある本
5 カレンダーのなかの季語
6 半島にて
著者等紹介
稲葉真弓[イナバマユミ]
小説家、詩人。1950年3月8日、愛知県生まれ。愛知県立津島高等学校卒業。編集プロダクションを転転としながら同人誌に作品を発表し、1973年「蒼い影の痛みを」で女流新人賞受賞。1980年『ホテル・ザンビア』で作品賞、1992年『エンドレス・ワルツ』で女流文学賞、1995年「声の娼婦」で平林たい子文学賞、2008年、短篇「海松」で川端康成文学賞、2010年、短篇集『海松』で芸術選奨文部科学大臣賞、2011年『半島へ』で谷崎潤一郎賞、中日文化賞、翌年、親鸞賞受賞。2014年5月、紫綬褒章受章。同年8月30日、膵臓癌のため死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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harass
67
著者の未収録のエッセイを集めたもの。図書館で『私が“覆面作家”だったころ』だけを立ち読み。80年台に著者がまだ駆け出し作家だったころ、アダルトアニメのはしりだった『くりいむレモン』のノベライゼーションを書いていたという告白をしていると聞いて読む。倉田悠子という名でほかにファンタジー小説も書いていたという。さすがにそのシリーズは読んだことがないが小説が出ているのは知っていたが、この人かと驚いた。2018/09/15
おおにし
10
日付からみて、恐らくこの本のあとがきが稲葉さんの最後の原稿でしょう。このエッセー集には稲葉さんが生まれてから半島での暮らしに至るまでの人生がつまっています。幼い頃の話はなかなか面白かったですが、特に覆面作家倉田悠子から阿部薫をテーマに小説家デビューする辺りの話が興味深かったです。残念なのは半島での暮らしに関するエッセーが少ないこと。もっと長生きして二十四節気に沿った日々の暮らしを綴ってほしかったです。合掌。2014/11/26
ぱせり
7
人の暮らしも、町も、明るく清潔、機能的で便利になってくると、ことさらに、ざらついた場所、薄暗い場所が恋しくなる。薄闇は、煌々と明るい場所にはない豊かさがひっそりと息づいている。子どもの頃の「私の書斎」の話、渋谷川の暗渠の話など、心に残る。 2017/05/27
きょ
4
「古いものと新しいものはじつは今という時間の中で溶け合って混在し、だれにもその正体をみることはできないのではあるまいか。」他にもスッと、またはピリッと気持ちに入ってくる文章がありました。2014年8月逝去、その直前に書かれたと思われる あとがきも、味わいがありました。文章を書くこと、こうした他愛のない感想文ではなく、日常のちょっとしたことから広げたり深めたり、そこに個人の人間性が表れて自分に似ていたり異なったりが新鮮だから、私はエッセイが好きみたいです。2015/02/14
siva
1
言葉や感性に独特のセンスが感じられる。生活のために覆面作家をした時代もあったが、ずっと書き続けた自分の生き方を持っている女性、というイメージ。2015/04/04