内容説明
江戸時代、経済の主導権を握ったのは名もなき一般庶民だった。幕府の経済政策が「財政規律派」と「成長重視派」に入れ替わることで起きていた好不況の波。ビジネスチャンスを求める人々は次々とイノベーションを起こし、民需による経済発展はやがて幕藩体制を崩壊へ導く。
目次
まえがき―経済の主導権を奪ったのは名もなき一般庶民だった
第1部 飛躍的に発展していた江戸時代の経済(「貧農史観」を捨てよ!;なぜ江戸幕府はいつも「財政難」なのか?)
第2部 資本主義を実践していた「大名」と「百姓」(大名と百姓のビジネス;借金苦に喘ぐ大名、アイデアに溢れる商人)
第3部 なぜ江戸幕府は“倒産”したのか?(「民間の活力」を生かせなかった江戸幕府;明治維新の原動力となった江戸の蓄積)
あとがき 「経済力」を生かせなかった江戸時代260年間の教訓
著者等紹介
上念司[ジョウネンツカサ]
1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
54
金や銀を通貨とすることに成功した江戸時代ですが、米を基軸通貨とすることにしたため、いろいろと不都合なことが起こってきます。また華やかな元禄時代の直後に幕府が財政難になる謎も解き明かされていきます。荻原重秀や田沼意次たちの政策によって一時的に幕府の財政は良くなるものの、いわゆる江戸時代の三大改革がデフレを引き起こす「改悪」だったため、デフレの期間が長くなるという結果に終わってしまいます。ハイパーインフレは困りますが、いつの時代でも頭の固いデフレ好きがいるものですね。2019/11/05
ミッキー・ダック
40
なぜ西欧列強は日本を植民地化できなかったのか?なぜ幕藩体制は崩壊したのか?その疑問を経済理論で解き明かしてくれる。◆安土桃山時代から引き継いだ強大な軍事力と、貨幣経済の革命による経済成長で、当時の日本は西欧列強が簡単に手出しのできない強国だった。経済の主役は幕府や大名から一般庶民に移り、生産性向上による消費拡大を通じ、世界最先端の資本主義経済を発展させていた。◆しかし、全国徴税権の無い幕府、石高制下の米価の相対的下落による財政難、経済拡大に伴う慢性的通貨不足、大災害が足枷となり幕藩体制が破綻した。 2019/08/30
saga
37
書店で見かけ、時代別に数冊が刊行されていたため、江戸時代をお試し購入。教科書に登場する改革を見ると、賄賂政治で悪者視された田沼意次より、新井白石や緊縮財政を主導した改革の為政者が評価されるような書きぶりだが、経済学の視点からは失政であったことが理解できる。米本位制や世襲を改革できなかった江戸幕府が、300年維持できたことが不思議でならない。2019/06/26
ころこ
31
江戸期の社会全体は経済成長したにもかかわらず、公儀が財政難で潰れてしまったという矛盾を①税として物納された米価の下落②徳川家の中央集権化の不徹底による収支の不均衡と明快に説明します。昔、日本史の勉強におかしなところがあると気付いたのは、田沼意次の評価でした。しかし、三大改革とその間に挟まれた治世の評価が、ことごとく裏返されることに承服し難い人もいるでしょう。歴史以前にある個人の感覚の問題で、そこが本当は厄介なところです。貨幣の改鋳による通貨発行益を認めるかどうかも論争になるはずです。2020/01/28
Syo
25
教科書がどれだけいいかげんか っていうのが改めて分かった気がする2022/01/20