内容説明
医学の目ではなく、「進化生物学」の目で病気と健康を考える。人間の身体とは何か、病いとは何かへの新たなアプローチ。
目次
第1章 病気はなぜあるのか?(生物の進化の歴史;進化とは何か ほか)
第2章 直立二足歩行と進化の舞台(地上から樹上、再び地上へ;腕の可動性 ほか)
第3章 生活習慣病(狩猟採集生活;運動 ほか)
第4章 感染症との絶えざる闘い(寄生者と宿主の関係;人類の歴史と病原体の進化 ほか)
第5章 妊娠、出産、成長、老化(妊娠の成立と維持をめぐる攻防;母親と胎児の「蛇口の開け閉め戦争」 ほか)
著者等紹介
長谷川眞理子[ハセガワマリコ]
総合研究大学院大学教授。1976年東京大学理学部生物学科卒業。83年同大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。早稲田大学政治経済学部教授を経て現職。進化生物学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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岡本正行
25
わかりやすい文章、まず、それがいちばん。ヒトは、なぜ病気になるのか、年寄りでなくとも、病気もすれば、ケガもする。ましてコロナやチフスとなると、全然、関係なく病気になる。生物学や医学は、そう言ったことを研究しているのと、素人的には考える。生来的や年齢的に、免疫力も総合的な体力は落ちる、生まれ持っての運命的なものもある。そういったことを、わかりやすく説明してくれる本だ。難しい話は、あまり出て来ないけれども、それを前提として、淡々と進めている。病気の考え方、好きでなるものでない、いろいろつらいことがある。2023/09/05
よく読む
2
遺伝子の突然変異による進化は、必ずしも生存に有利なものが残るわけではなく、かなりの部分はよくも悪くもない中立な変化だ。集団が小さいときには、変化は偶然広まってしまうことが多い。それが病気であってもだ。アフリカで生まれたヒトの一部の集団がヨーロッパに進出したとき、その小さな集団で病気が淘汰されずに広まってしまった。今でも私たちはそれを抱えている。また、鎌状赤血球症や統合失調症(過剰な自動抽出)などの平衡淘汰は、病気でもあり適応でもある。2016/02/09
米川青馬
2
読了。進化学から見た病気についての本。最近は常識になりつつあることをわかりやすく詳しく説明してくれてありがたい。たとえば、エネルギー源に困らない現代社会に身体が対応できないために起こる生活習慣病。ヒトは絶対に勝てないウイルスとの進化的軍拡戦争と抗生物質耐性菌の出現。ヒトのおばあさんがなぜ元気に生きているか。個人的に面白かったのは、男性の無駄で不合理な輸精管の経路や、出産の苦労する女性の産道の設計は明らかに進化的に直すべきなのに、そのままになっていること。ヒト(生物)の設計は僕らが思うよりテキトーなのだ。2012/01/30
骨ゆん
0
生物学の観点から病気の原因に言及しようと試みた本。人間がどのように進化したのか、病原菌はどう進化してきたか、からどうして病気になるか説明しています。最終章では妊娠や出産といった病気以外のテーマに移ります。病気云々より人間がこの世界に現れてからどう変わってきたのかという大まかな歴史だと思って読む方が腑に落ちます。人間の体の仕組みを人間発生の歴史からみていきたい人向け。2014/08/08