内容説明
長年にわたる他国の支配を脱し、独立国家の夢を果たしたポーランドのありのままの姿を探ろうとする作家の眼。我々は80年前よりましな世界に立っているのだろうか?民族と国家の問題を問う古びない本。単なる旅行記を超える傑作。
目次
ワルシャワ
ワルシャワのユダヤ人街
ヴィルノ
ルブリン
レムベルク
油田地帯
クラカウ
ザコパネ
ウッジ
出立(ダンツィヒ)
著者等紹介
岸本雅之[キシモトマサユキ]
1952年生まれ。岡山大学大学院修士課程修了。岡山商科大学教授。専門はドイツ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ27
65
読了した、ほぼ7日間、じくじくと読み進んで。当初はポーランド版街道を行くといったものかと思いきや、実に生真面目で硬い「民族と国家」相克論。執筆は1925年、かの国が戦争と独立の喧騒にあった時間。筆者は19C末に生まれは独文学界巨匠(でも私は無知)西生まれのユダヤ人の同化2世と称される立ち位置。シナゴークやイディッシュ語の影が薄くなっていったとは言え、激しい差別にさらされてきている・・それを逆手に 彼自身タフになって行ったといいきる。旅行記と思い 手に取ったが熱い想いを秘めた 高度の文化的思想と憂国の情炎2022/06/13
mortalis
10
1924年9月末から11月末のポーランド旅行の記録。小説では微かなデーブリーン自身の思考や感覚が明白にわかる。彼は可愛い少女が好きなのだ。ヴィルノのイディッシュ語学校のユダヤ人少女たちの描写が愛らしい。だが、この子たちはどうなったんだろう?と思って調べてみて、この旅行記のもう一つの特徴、これが書かれた時にはまだ起こっていなかった戦争との関連から特に興味深い旅行記であるという特徴が鮮明になる。デーブリーンが紹介している少女たちは多分皆その15年後には生きてはいない。2017/11/04