内容説明
『作家の日記』は従来から、この作家の膨大な著作の中でも、一種きわめつきの難物とされ、退屈で陳腐で愚劣な反動的政治論と黙殺されてきたきらいがある。著者はそうした一本調子のイデオロギーや浅薄な定評が嗤う。ドストエフスキイの政治的考察が立脚せねばならなかったロシア民衆の歴史的伝統と、民衆のうちに胎まれる幻に注目することで、民衆の初原的な共同性の夢に依拠した政治思想のありかを明らかにする。本書を通じて、時と空間を超えてふたつの個性が響きあう至福の瞬間に立ち会える。
目次
1 夢見る人
2 基軸の転換―オムスク体験
3 民衆の発見―E.H.カーの読みちがえ
4 ロシア近代と日本近代の相似
5 西欧的進歩主義への嫌悪
6 鳴り響く主調低音―「百姓マレイ」
7 「小さきもの」への感受性
8 民衆のうちに胎まれる幻
9 市民社会になじめぬロシア民衆の伝統
10 民衆の初原的な共同性の夢に依拠した政治思想
著者等紹介
渡辺京二[ワタナベキョウジ]
1930年京都生まれ。大連一中、旧制第五高等学校文科を経て、法政大学社会学部卒業。評論家。河合文化教育研究所特別研究員。2010年熊本大学大学院社会文化科学研究科客員教授就任。主な著書に『北一輝』(朝日新聞社1985、毎日出版文化賞受賞・ちくま学芸文庫2007)、『逝きし世の面影』(葦書房1998和辻哲郎文化賞受賞・平凡社ライブラリー2005)、『黒船前夜』(洋泉社2010、大佛次郎賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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