内容説明
「エコ・テロリズム」とは一体何なのか?過激な反捕鯨運動、動物実験関連企業や研究者への執拗な脅迫・襲撃、自然開発業者の関連施設への放火、バイオ関連企業への爆弾攻撃…。「環境保護」や「動物愛護」を理由とした暴力事件が近年続発し、欧米では大きな社会問題となっている。ラディカル環境・動物解放運動の歴史と思想的背景を読み解いていくと、戦争によって独立を勝ち取り、奴隷解放・公民権運動によって権利を勝ち取ってきた、「アメリカ」の真の姿が浮かび上がってくる。
目次
第1章 エコ・テロリズムとは何か(続発するエコ・テロリズム;エコ・テロリズムとは何か)
第2章 ラディカル環境運動と動物解放運動(グリーンピース;シー・シェパード ほか)
第3章 思想史的背景(直接行動主義的環境運動の源流;動物の権利 ほか)
第4章 アメリカにおける反エコ・テロリズム(反エコ・テロリズムの源流;エコ・テロリズム関連立法)
著者等紹介
浜野喬士[ハマノタカシ]
1977年、茨城県生まれ。早稲田大学法学部卒業。現在、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程在籍。専門はドイツ近現代哲学、社会思想史、環境思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
6
「19世紀イギリスの動物愛護運動からの影響以外に、動物解放戦線などの思想的源泉として挙げられるのは、ピーター・シンガー…シンガーは動物に関する倫理的問題を扱った多数の著作で知られるオーストラリア出身の哲学者」「シンガーが主著『動物の解放』において用いる鍵概念は「種差別」である…もし意識の複雑性や快・不快の程度という点において、人間が動物より勝る事実が、両者を分かち、また動物を殺すことを正当化する基準として機能しているならば、脳に重度の障がいをもった新生児は殺してもさしつかえない、という結論にいたる」2015/11/27
ユウタ
5
過激な環境保護・動物愛護運動の根っこには、アメリカの市民的不服従の伝統があるという本。「黒人の権利」や「女性の権利」も、時には法律の踏み越えによって勝ち取られてきた、だから「動物の権利」だって…という言い分は、果たして妥当なのかどうか考えてしまいます。エコ・テロに対抗して、社会にリベラリズムを確保しようとする動きが、逆にその守ろうとするリベラリズムを制限する形で行われるとの指摘も。2010/01/30
海星梨
2
あー海外ドラマで時々テーマのひとつになっているやつだーと安易に読んだら、聞かない新書だったから、どうかなーと思ったんだけど、充実した内容だった。エコテロリズムという政略的な言葉からいったん離れて、思想史というアプローチで、それを考えていき、さらに反対派の流れも知れて、満足。動物裁判はどこかで聞いたことがあるんだけど、もうちょっと調べようと脇道にそれたりしつつ。2018/12/20
こにいせ
2
良書。シー・シェパードの反捕鯨に代表されるような、欧米的な環境活動にはまずロビイングなのだろうと思っていたが、少々思い違いだったようだ。ラディカル化する環境活動には党派あれど、一足飛びでテロリズムに走っているのが、シー・シェパードなのだ。そしてその思想的源泉は、「正義の為なら武力行使も辞さない」ことで歴史を作ってきた、アメリカ的な「良心的市民権」である、と。この問題、かなり奥が深い。2010/04/10
2n2n
1
「法の遵守ではなく、法の踏みこえこそが、アメリカ史を画するいくつかの重要局面において、決定的な役割を果たしてきたのである。(p.6)」が、歴史的事実だとしても、暴力行為を伴う環境保護・動物愛護(解放)運動は許されるのか? という疑問を投げかける一冊。2012/07/28