内容説明
原発の温排水による環境破壊は、あまり知られてはいない。海岸には、ウミガメ、サメなどが大量に死亡漂着し、周辺漁協の漁獲は激減、惨憺(さんたん)たる有様である。影響は原発周辺に止まらず、はるかに広い範囲に及ぶと想定される。
目次
第1章 ウミガメの死亡漂着(二〇〇九年ウミガメの死亡漂着;二〇〇九年クジラ、イルカの死亡漂着;二〇〇九年サメ、エイ、ダツの死亡漂着;二〇〇六年、二〇〇八年ウミガメの死亡漂着;二〇〇九年ウミガメの異常行動)
第2章 海の生物の子どもを殺し、海を温暖化する原発(川内川河口の自然環境;海に熱を捨てる原子力発電所;原発に吸い込まれる水中の生きものたち;局所的「温暖化」による熱帯性外来生物の定着)
第3章 川内原発の温排水による海洋環境破壊(日本最悪の立地、川内原発;海の放射能汚染;海水温の上昇による生態系の異変;安全協定を逸脱する平均八度、最高一〇度の温排水高温化;環境調査で、温排水の再循環を自ら立証)
著者等紹介
中野行男[ナカノユキオ]
1958年、鹿児島県薩摩川内市寄田町生まれ。車体整備士として長く勤め、現在は海岸清掃ボランティア、ウミガメ保護活動に携わる
佐藤正典[サトウマサノリ]
1956年、広島市生まれ。鹿児島大学理学部教授。専門は底生生物学
橋爪健郎[ハシズメタケオ]
1942年、宮崎市生まれ。元鹿児島大学理学部助教。専門は環境物理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coolflat
12
温排水の問題点は大きく三つある。第一に魚の子どもが大量に殺されているということ。第二に温排水と一緒に放出される放射能による汚染。第三に海水温の上昇による生態系の異変だ。本書はその中でも第一、特に第三の問題、原発の温排水によってもたらされる海の生態系の悪影響を論じている。ちなみに検証している原発は再稼動開始1号と予想される川内原発だが、この川内原発の近くに川内川という大河川が存在する。大河川の河口に位置する原発は日本全国でも川内原発しかないと言う。海にも川にもヤバイ川内原発をなぜ再稼動するか。理解に苦しむ。2015/07/07
キキ
5
毎秒133トンの海水が、冷却水として取水され、それが温排水として排出されることで、海水の温度が上がるのは当然のことだ。それによって海の生態系に変化があるのは当然だ。海の生き物たちに申し訳ない。今思えば、鹿児島県の長島の海水浴場で熱帯魚が普通に泳いでいたのも、海水の上昇と関係があるのだろうか。あと、山口県上関町の長島という、由緒ある神社の土地に原発を作ろうという計画があったことも初耳。何より、川内のサメやウミガメの死亡漂着の写真や、汚染された作業員の服を洗濯した水も海に流されていたなんてショックだった。2016/06/13