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内容説明
社会主義を経験した地域で、宗教がもつ意味とは?カザフスタン、モンゴル、カンボジアなどのアジア各地を対象とし、フィールドワークにもとづいた人類学的アプローチによって、宗教と社会の関係を問いなおす。
目次
社会主義を経験したアジアから展望する宗教動態
第1部 中央アジアのイスラーム(ウズベキスタンのマハッラにおける経済・社会変化とイスラーム―二〇〇〇年代を中心に;中央アジア定住ムスリムの婚姻と離婚―シャリーアと家族法の現在;移動が生み出すイスラーム動態―国境を隔てたカザフ社会の再編過程から)
第2部 モンゴルのシャマニズム(シャーマニズム)とチベットのボン教(感染するシャーマン―現代モンゴルのシャーマニズムにおける逆転する社会関係、分裂する共同性、微分化するモラリティ;動物霊の位置づけをめぐる交渉の行方に―中国内モンゴルにおけるホルチン・シャマニズムの再活性化の事例より;再編される共同性と宗教指導者の役割―中国、四川省のチベット社会を事例に)
第3部 中国西南部から東南アジア大陸部の上座仏教(中国・ミャンマー国境地域における仏教実践の再構築―文革後における徳宏タイ族の越境と地域に根ざす実践の動態;森にセイマーを見いだす―浄域を通してみるカンボジア仏教再生の動態)
著者等紹介
藤本透子[フジモトトウコ]
国立民族学博物館助教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
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syaori
66
10~12年度の国立民俗学博物館共同研究「内陸アジアの宗教復興」の成果をまとめた一冊。社会主義下で信仰の断絶を経験した地域の宗教実践の動態をフィールドワークから分析したもので、地域は旧ソ連圏からカンボジアまで、宗教もイスラームから上座仏教までと多様です。見えてくるのは、市場経済の導入で資本主義的な価値観が浸透する中、かつてのように民族のためでなく個人的な悩みのためにシャーマンになるモンゴルの人々のように社会の変化を反映して変化する信仰の姿で、時代に合せてしなやかに変化してゆく人間の強さと弱さを感じました。2023/10/06
夜間飛行
56
社会主義的無神論を経たアジア諸地域の宗教動態を論じた本。まずウズベキスタンのムスリム女性の新しい生き方が因襲と衝突するルポ。次にカザフスタン独立後に在外カザフ人が続々帰還しそれぞれのイスラム実践を行う、「移動」に着目した報告。そしてウランバートルで個の苦悩の解決策としてシャーマンが急増している背景に、《モラリティの真空》を見る主張。さらに中国内モンゴルのシャーマンに近年、祖霊ならぬ動物霊が憑き始めた現象を、他者を内面化するプロセスまたは痛みへの共感によるネットワークの形成過程とする論考。いずれも興味深い。2017/04/23