内容説明
随筆、エッセイ、手紙、詩、ポエム、投稿…戦前から現代までの「女子本」で出会った、文章と人生のリアリティ。「書く」女性たちの切実な声を共感をもって甦らせる、類のない読書エッセイ。
目次
大橋歩は大橋歩である―大橋歩『トマトジュース』
素人好みをもって、思うままを筆に―今井邦子の随筆
文化系女子の女学生時代―『オリーブ』「読者からの手紙」/『オリーブ・クラブ』
娘の手紙―今西博子『巴里より愛するママへ』/新田まり子『サヤの手紙』
舌足らずのラブレター―「恋愛貼込帖」
孤独の始末―左川ちか『左川ちか全詩集』
女の子はみんな詩人―清水哲男『あなたも詩人』/『愛のスケッチブック』/『“愛”ってなあに』
カバーガールたち―安井かずみ『空にいちばん近い悲しみ』/落合恵子『おしゃべりな屋根裏部屋』/ファッションページと女の子の詩
作文する妻たちの孤独―大村重子他『主婦』/『笑いを一樽―結婚についての214のお話』
著者等紹介
近代ナリコ[コダイナリコ]
1970年生まれ。編集者、文筆家。ミニコミ誌『モダンジュース』を編集発行(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kana
33
よかった!とてもとてもよかった。男子が私小説を書いていた頃、女子にも女子だけのとっておきの言葉があり、文章があった。たとえば手紙、雑誌の投稿欄、恋心を綴ったポエム、ささやかなエッセイ。特に海外生活中の娘が大好きな母に寄せる手紙を集めた「娘の手紙」の章は文章の中にありったけの個人的な喜びや不安や思索がつまっていて、読んでいて心が千々に乱れて泣けました。《ファッション写真をみてうっとりすることと、詩集を読んでうっとりすることのちがいなんて、女の子にとってはどうでもよいことなのだ。》とは言い得て妙。2013/09/07
Nobuko Hashimoto
27
「女子」という言葉の乱発は好きではないが、なるほど、ここで取り上げられている文章や詩には「女子」が合うかも。時代は大正から昭和の後期までと幅広いし、プロの文筆家のエッセイ、外国留学した女子学生が母親にあてた手紙、プレイボーイに宛てたラブレター、主婦の投稿作文などさまざまなのだが、概して「女(の子)である私」を感じさせるのである。いやいや一冊に編まれて「女子」と冠されたから、そのように感じてしまうのかも。戦中戦後にパリやアメリカに留学した若い女性の手紙の主たちは、いじらしくもありたくましくもある。2020/02/02
ケイティ
13
いわゆる「ガーリー」を超えた深い珠玉の文章たち。当時の女性たちの表現力の素晴らしいことと言ったら! みなさんドラマチックで、心動かされる言葉たちばかりです。今よりもモノも情報も少なく、自分にしかない小さな世界だからこそ濃縮された感覚が絞り出されたように思う。女性は自分で折り合いをつけることにいつだって真剣。これは男性には分かりづらい一冊かも。胸いっぱいになりました。2013/10/03
ume-2
9
女子達の、決して文学的ではない文についての考察。中でも大正末から昭和初期神戸の一人のモボが幾人もの女子からのラヴレタアを几帳面にスクラップしていた中身を紹介した「恋愛貼込帖」が出色。(この男の趣味には気味悪さを感じるが。)詩人左川ちかを語る「孤独の始末」にも圧倒される。教育を受けることすら偏見された時代でも、黙して語らずが当たり前でも、彼女達は内に「自由への欲望」を抱えていた事が良くわかる。それを表明する彼女達には男にはない覚悟があり、ゆえに優れた文が少なくない。何でも手に入る現代が、逆に味気なく感じる。2013/09/24
kuukazoo
8
文学史の外側もなかなか興味深い。「書く」ことは広く人の営みとして、連綿と続けられてきた。この本で取り上げられている文筆家ではない女性達の「文」は、雑誌の投稿欄だったり同人誌の類だったり誰かへの手紙だったり、どれも書かれたものが即ちその人を体現しているような、生(なま)の文章ばかりで、書くことはこんなにも生きていくことと密接に結びついているのだなぁと思った。本書のタイトルに添えられた「Girls write alone」に、書くことで埋めようとしたそれぞれの孤独の情景が浮かんでくる。2014/07/13