内容説明
戦争が自分の中のアメリカと日本を引き裂く。全米で15万部超えのロングセラー新訳刊行!
著者等紹介
オカダ,ジョン[オカダ,ジョン] [Okada,John]
広島県にルーツを持つ日系アメリカ人二世。1923年9月23日シアトル生まれ。日米開戦後の42年アイダホ州ミニドカの収容所に入る。志願後、陸軍情報機関に所属、太平洋戦線へ。ワシントン大学、コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで学ぶ。57年に小説『ノーノー・ボーイ』を発表。71年に急死するが、その後小説の文学的価値が見直され76年に復刊、以後日系のみならずアジア系アメリカ人文学を代表する作品として読み継がれている
川井龍介[カワイリュウスケ]
ジャーナリスト、ノンフィクション・ライター。1956年神奈川県生まれ。慶応大学法学部卒業。毎日新聞記者などを経て独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
55
運命の分かれ目のYes/No。祖国、家族・親族、そして自身を、問い詰めた先の痛み。そもそも論の悪法、「Exec. Order 9066」。Freshmanの時に受講したUS Historyの記憶は鮮明。本著の中身もさることながら、70年代に復刊したという事実は、USらしさでもある。#442部隊の対極に位置する”戦場”故の重みもある。現在も世界各地で散見される根深い人種問題。”日系”の甥と姪の国籍などどうでもよくて、甥と姪という事実のみが全て。時勢ではなく、人の心という気がするんだけどなぁ。2017/10/21
Panzer Leader
33
WWⅡ前後の日系アメリカ人を語った作品は多々あれど、それらの多くは442連隊などの日系2世部隊を描いたものがほとんど。その中で本書は米国へ忠誠を誓うことを拒否し、かつ米軍への徴兵にも応じなかったため「ノーノ―・ボーイ」と呼ばれた若者の苦悩を綴った物語。アメリカ人でもなく日本人でもない自分が何者で、どう生きていくべきかを模索する姿は痛々しい。60年前の作品ながら、同人種以外を排除し他人種に対する不寛容な空気が世界に満たされている現在にも通じるメッセージ性は色褪せることがない。2018/01/04
ののまる
14
なぜ日本人だけ強制収容されたのに、アメリカに忠誠を誓って懲兵されなければならないのかという矛盾への憤り、日本人と闘いたくないなど様々な理由で徴兵拒否をした日系二世青年達は、刑務所に2〜3年間送られていた。戦後出所するも、徴兵に応じて(志願も)激戦を闘って生還した日系二世との間に軋轢を生む。しかし、どちらも戦後アメリカ社会からの差別は止まず、自分はアメリカ国籍なのに誰なのかがわからない、アイデンティティの危機にもがく若者達の姿。さまざまな視点から日系アメリカ人の歴史を知りたい。2021/11/15
えみさん13
14
小川洋子さんがナビゲートするラジオ番組「パナソニック メロディアスライブラリー」にて紹介された本。真珠湾攻撃によって勃発した戦争。主人公は日系アメリカ人で、ふたつの重要な質問【徴兵とアメリカへの忠誠】にどちらも「ノー」と答えた=ノーノー・ボーイ、イチロー。「日本人」「アメリカ人」いう葛藤の内に、『自分は何者か』という普遍的テーマがイチローの目を通じて描かれていく。2018年読んだ本でベストに入ると思う。とても良かった。2018/02/12
まさきち
5
第二次世界大戦中の渡米二世の主人公。裁判でもノー、徴兵にもノーと言ったことでノーノーボーイの不名誉な呼び名で一括りにされることになる。 渡米一世の両親とも断絶、弟とも断絶、日系社会からも断絶、手を差し伸べてくれた優しきアメリカ人とも断絶、更には中国人や黒人などの他のマイノリティとも断絶した主人公の境地。孤独は作品執筆によって少しは癒えたのだろうか。2023/08/22