内容説明
「救急車を呼びたい。救急車を呼びたい!」。友代は心の中で叫んでいた。万一のときに困るから、とやってきたこの救急病院で、その万一が発生したというのに、医者がこない、医者がいないのだ。娘治美は、手足をググッとそり返らせると、そのまま動かなくなってしまった。―医の心を忘れた“怪物病院”に立ち向かう両親の慟哭を描いた「空白の時刻」。死を受け容れた者だけがみせる深い悲しみ。血友病エイズ患者の“明日のいのち”を想い、厚生行政に怒りを叩きつける「血友病エイズ裁判」ほか、事件でつづる患者と家族の人生模様。
目次
第1部 いのちの訴状(空白の時刻;障害の檻;目覚めなき眠り)
第2部 わが街、わが友(地域に生きる;息子;慥かなもの―千春さんのこと)
第3部 明日へ(血友病エイズ裁判;患者の権利宣言)