内容説明
著者は、宅間守元死刑囚をはじめ91件の精神鑑定を行ってきた。精神障害を負った被告に対して厳罰化を求める風潮、そして裁判員制度のスタート。精神障害を負っていても罪をつぐなうべきなの?鑑定事例を詳細に引きながら、「責任能力ある・なしの境界線」に切り込んだ問題作。
目次
1 なぜ厳罰化が進んでいるのか(現状をどう見るべきか;厳罰化の背景にあるもの)
2 「統合失調症の責任能力」を考えるための三つの鑑定事例(殺人、殺人未遂―Y鑑定書;殺人、殺人未遂―M鑑定書;窃盗―N鑑定書;統合失調症と診断した他の鑑定例)
3 責任能力のある・なしの境界線をどこで引くべきか(責任能力を論じるときに押さえておくべきこと;裁判員制度における精神鑑定の問題点)
著者等紹介
岡江晃[オカエアキラ]
精神科医。1946年、高知県に生まれる。京都大学医学部卒業後、1972年から京都府立洛南病院に勤務し、重大犯罪を犯した精神障害者や覚醒剤精神病者の治療に精力的に取り組む。1998年に副院長、2003年から2011年まで院長を務める。1992年より刑事事件の精神鑑定を担当するようになり、2002年の宅間守の精神鑑定を含め、2013年までに91件の精神鑑定を行ってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スパイク
16
こないだ、淡路島で5人が殺害される事件があった。被疑者は精神疾患を患っている旨の報道もあって興味あったので読んでみた。著者は精神科医で池田小事件の宅間守の精神鑑定も担当。統合失調症では重度=責任無能力、中ないし軽度=限定責任能力ありとの見解が示される。著者が関わった事例をあげて統合失調症の程度判定をしていて異存はないのだが一番知りたかった『”なぜ”罪がかるくなるのか』の記述は(私の読みとるところによると)一切なく、精神鑑定の記述で終わっていて非常に残念。”なぜ”罪は軽くなる?どなたか、わかるひとおせ~て!2015/03/15
ひとまろ
5
刑法の責任能力の解釈の為に副読本として。 実際に向き合うとこんな支離滅裂なことを 発言されるのかと思うと気が滅入るな。 今回はさらっと目を通すだけ。2015/12/08
種蔵珪也
1
どんな人なのかと思って。症状持ってる人と健常者のラインがわからないけど、薄っすらこういう感じの人、いるよね。著者は治療優先の考えしてるけど、それが良いのかは正直分からない。ただ一般的な刑務所に入れると誰しもが多大な苦労するだろうから、専門的に対応できる人の所にいた方が良いとは思った。2018/07/29
akaichihiro
1
事例1・2は読んでいてツライ。何とか治療に繋がらなかったのか。厳罰化が進む中で統合失調症の人たちもそうなるというのは何だか仕事柄モヤモヤする。でも被害者からしたら無罪なんてたまらないだろうな。2014/12/04
よよよ4
1
(飛ばし読み)それぞれの鑑定事例を読むと、被鑑定人たちが犯罪行為に到るまで、その病状の変化によって一体どのような出来事・世界を体験していたのかが非常に詳しくわかります。また、現在の厳罰化の一要因として、かつては『患者を強い管理下におき再犯防止のために保安処分的・保安施設的な役割を担っていた』精神病院が閉鎖病棟の開放化と人員不足でその役割を放棄したことが挙げられているのが非常に印象的でした。それってつまり精神病院が「犯罪行為に問われた統合失調症にとっての実質的な刑務所」となっていたということでしょう?2013/12/19