出版社内容情報
わが国独自の文学批評のスタイル、「文藝時評」の全容を初めて集大成
【収録内容】
解放文藝〔日旺付録〕（島村抱月）『読売新聞』１月10日／「俳諧師」を読みて〔機微談語〕（渋川玄耳）１月27日／昨年の小説戯曲〔彙報〕『趣味』１月／四十一年小説界の概観（溶樹生）『新声』１月／戊申文壇概観〔評論〕（樗陰生）『中央公論』１月／評論の評論『文章世界』１月／最近文藝概観［詩・小説戯曲］〔時評〕（ＲＯ［詩］ＭＹ［小説戯曲］）『帝国文学』２月／新春の小説界『新文林』２月／新春文壇に於ける各作家短評〔評論〕（星雲子・空明子）『中央公論』２月／地下一尺録（木下杢太郎）『スバル』２月／吾人の小説批評の態度、二月の小説〔雑録〕（木下杢太郎）『スバル』３月／最近の印象『文章世界』３月／合評記（三人会）『新潮』４月／三月の雑誌の内より（木下杢太郎）『スバル』４月／最近の創作（中村星湖・秋田雨雀）『新潮』５月／自然主義の残塁〔時文〕（後藤宙外）『新小説』５月／寄贈された雑誌『文章世界』６月／文士の堕落（大町桂月）『東京日日新聞』７月４日／六月の小説界〔論説〕（中村星湖）『早稲田文学』７月／六月の諸雑誌〔月旦〕『新小説』７月／藝術家の冷酷なる態度〔文藝時評〕（長谷川天渓）『太陽』８月／最近の創作壇（中村星湖・徳田秋声）『新潮』８月／先月の小説〔彙報〕『趣味』９月／九月の評論（安倍能成）『ホトトギス』10月／空疎なる主観〔文藝欄〕（安部能成）『東京朝日新聞』11月29日／重なる文学雑誌『文章世界』11月／十月の創作壇（水野葉舟）『新潮』11月／文壇其の折々『文章世界』11月／十一月の小説界〔論説〕（相馬御風）『早稲田文学』12月／十一月の小説（小宮豊隆）『ホトトギス』12月／四十二年文壇の回顧（内田魯庵・長谷川天渓・徳田秋江・片上天弦・小山内薫）『文章世界』12月／ほか
【本書の特色】
●同時代の小説・文藝評論・戯曲への現場批評である「文藝時評」を初めて集大成する。収録文は明治十年代末より昭和四十五年まで。「文藝時評」は、その時の「文壇」と密接な関係にある。文壇棲息者の生きいきとした注視と活動があってこそ、初めて同時代の現場批評が成立する。本大系には「文壇」の成立期から「文壇」と「文壇ジャーナリズム」が濃密な関係をもちえた昭和四十五（一九七〇）年までの「時評」を収める。諸機関の協力をいただき、できうるかぎり新聞、雑誌の初出原本を復刻収録する。
●「文藝時評」は、主として小説・文藝評論・戯曲を批評の対象としている。別に詩、短歌、俳句などを対象とした時評があるが、「特殊なスタイル」のものを除き割愛する。「特殊なスタイル」とは「最近の文学界」などの総題の下に「詩」を含む全ジャンルを評論したものを指す。これらは原則として全文収録する。
●明治篇、大正篇、昭和篇、全巻にわたって詳細な索引を付す。従来の作家・作品名索引にとどまらず、項目（たとえば「大逆事件」「関東大震災」、文学論争など）からも作品をたどることのできるよう工夫した。
