内容説明
ふたたび航海に出たガリヴァーは、今度は空中に浮かぶ「飛ぶ島」に連れていかれ、奇妙な体験をします。そして、なんと江戸時代の日本に来ます。最後の航海では、馬の支配する国に迷い込み、高潔な馬の主人に仕えます。抄訳本では十分に紹介されなかったこれらの物語が、挿絵入りで完訳されました。
目次
第3篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ、および日本への航海
第4篇 フウイヌム国(馬の国)への航海
著者等紹介
スウィフト,ジョナサン[スウィフト,ジョナサン][Swift,Jonathan]
1667年、アイルランドのダブリンに生まれた。両親のいない不幸な幼年時代を伯父のもとで過ごす。ダブリンの大学を卒業後イングランドに渡り、学問研究に励む。生涯の公職であった聖職者としての活動をしながら、政治、文学の世界で活躍する。1745年没
ブロック,C.E.[ブロック,C.E.][Brock,Charles Edmund]
1870年、ロンドンに生まれた。イラストレイター、水彩画家として活躍。ディケンズなどの小説に挿絵を描いた。1938年没
坂井晴彦[サカイハルヒコ]
1922年、東京に生まれた。1943年、東京商科大学卒業。元、青山学院女子短期大学教授。2002年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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桑畑みの吉
2
下巻では「飛ぶ島(ラピュタ)」→「大学」→「魔法使いの島」→「不死の人間がいる国」→「日本」→「馬と原始人の国」の順番で訪問している。空想物語の中で何故か1709年の江戸時代日本を訪問しているのが興味深い。作者に何か意図があったのだろうか?下巻で最も分量が多いのは「馬の国」訪問である。知的な馬がヤフーという名の原始人を支配している話で映画『猿の惑星』を思い出した。下巻でも住民とガリヴァ―の対話を通して政治、経済、法律についての言及が多かった。この辺りは児童向けの出版ではかなり省略されていると思う。2020/08/12
小皿
1
愚かさ、貪欲さ、残酷さ……人間のグロテスクな部分が拡大されて突きつけられる。読んでてちょっと気持ち悪くなるくらいに。2022/05/23
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
1
訳文に、多少の手加減があることにうっすらと気づいた。作品の質を損なっているとは思わないが、もしひとつだけ読むならば、やはりこの福音館ではない方がいいかもしれない。けれど非常に読みやすい訳で好感が持てる。2022/05/04
ほとり
1
第三篇のラピュタはじめとした科学の国では、知識や技術が高度に追求されるあまり、幸せな実生活から切り離される恐ろしさと虚しさを暴く。いまの核技術を思えば、スウィフトの憂鬱は続いている。第四篇では、精神性の高い種族フウイヌムを通じて、野蛮な種族ヤフーの愚かさを見て、ヤフーにそっくりな人間社会に絶望する。オデュッセウスのような旅行記ファンタジーのオブラートで包まれているが、作品全体はスウィフト自身の激しい憤りに満ちている。このことが作品の強烈な個性を生み出していると思う。子どもには理解できない、大人が読む本だ。2013/01/19
凛
1
ラピュータ(飛ぶ島)、バルニバービ(ラガード大学の研究)、グラブラドグリッブ(魔法使い)、ラグナグ(不死人間)、日本への航海と、フウイヌム(馬の国)への航海。上巻よりもエグい表現が目立つ。ラピュータの印象の悪さには驚いた。ラピュータやバルニバービの描写は、理論と現実の差異の虚しさを感じた。またフウイヌムの、醜いヤフーと美しい馬の対比は非常に印象深く、特にヤフーは自分への戒めとしてこれからも心に残ると思う。また時が経ったら読み返して、その時どう感じるかを楽しみにしたい。2013/08/07