内容説明
この世にある、見えつつ〈見えない世界〉に向けられた文学的言語の異化と生成の位相を江戸時代文学を中心にとらえた力作21編。
目次
1 世間・異界・もの(『伽婢子』考―序文釈義;近世仮作軍記と魔界の論理―『後太平記』の歴史叙述;『本朝二十不孝』の方法―弱法師と不孝坊;『伊達競阿国戯場』の累―累と〈世界〉の変容;死せる者の声―『謎帯一寸徳兵衛』考;意味としての体裁―俊徳丸の変容;折口信夫の琉球体験―フィールドワークに先立つもの)
2 作者・他者・共同体(国譲り、天孫降臨神話の中の忌部氏―『日本書紀』神代第九段第二の一書の伝承者;芭蕉論ノート―逃走者の可能性;安寿の犠牲―「さんせう太夫」論への視界;狂う女・玉手御前―『摂州合邦辻』合邦住家の段;『猿丸太夫鹿巻毫』の主題と構造―逸脱した謀反劇;多田南嶺・マイナーな作者―『忠盛祇園桜』と多田家大星伝;『金雲翹伝』と『桜姫全伝曙草紙』―野分の方と玉琴の対立)
3 文章 自然・風景(さよひめの旅―説経『まつら長者』論;『伽婢子』の長生論―道教の「気」の思想;『好色一代男』の捨て子譚―和泉式部の伝承;水足博泉と文章―文章入門から古文辞へ;和文家をめぐる断章―綾足と秋成;秋成散文の表現―『藤簍冊子』の自己言及;幻術と伝神―読本の主題と細部)