内容説明
ただひとつ、ずっとわかっていることはこの恋が淋しさに支えられているということだけだ。この光るように孤独な闇の中に2人でひっそりいることの、じんとしびれるような心地から立ち上がれずにいるのだ。―絶対の愛の感情と喪失を透明な夜の夜間の中に描いた「白河夜船」「夜と夜の旅人」「ある体験」の三部作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
145
やはりヒーリングとしては'無敵'のばななさん作品です。今考えると、30年も前によくこんなにも堂々?とタブーなテーマをサラッと書いていたなぁと思います。不倫している女性が主人公でありながらも、暗い雰囲気はあまりなく、かといって楽観的でもないそのバランスはばななさんにしか書けない世界なんだろうなぁと。ただ眠っているだけの描写であっても、そこになんとも言えない美しさが描かれ、ただ電話が鳴るシーンであってもまるで映画を観ているかのような気分になります。静けさがこんなにも美しい作品は、ばななさんだからこそですね。2019/06/30
おしゃべりメガネ
129
ちょっと久しぶり感のあるばななさん作品です。こちらも他作品と同様に初めて読んだのは今からおよそ20年以上前で、平成の一ケタ前半の頃です。それだけ月日が流れているのに、やはりばななさん作品は全く時の流れを感じさせない素晴らしい作品です。スマホもエコカーも出てきませんが、ひたすら人物描写でたんたんとクリアに書き綴る作風は、今読んでも十分すぎるくらい新鮮さを失っておりません。むしろ今でこそこういった作品が逆にインパクトを与えてくれる感じすらします。ファンタジー、スピリチュアルなどなどステキなばななワールドです。2015/10/16
佐島楓
29
川端康成の「眠れる美女」を思い出した。眠りはすなわち一時的な死ではないだろうか、と考えたことも。夜と眠りと死でできていながら、不思議と重苦しく感じない三篇。それは、やはり著者が明るい明日を信じているからなのだろう。2014/07/12
ひかる
19
眠りの、夜のお話。三部作です。どのお話も登場人物がある期間からそこに留まってしまい抜けられない。その様を、眠ることや寝て見る夢や、或いはスピリチュアルなものに綺麗に表しています。それでも最後は、あとがきでもあるように、そのうちぱっと目が覚める。だから眠っていてもいいんだよと、ばななさんのメッセージが温かい。夜の深さや広がり、うとうとと夢と現実を行ったり来たりの夢うつつの様子がなんとも切なく、でも心地良かったです。寂しい夜や眠れない夜にこそ読みたいお話。2017/05/05
mizuiro
8
わたしはこの本を読めて本当によかった。 今、このタイミングで、この本、を読めたことが運命というか福音というか思し召しというか。 あとがきにあったことばが、ありがたくて涙が出た。 マイベストばななに登録。 2015/07/18