内容説明
全く新しい感覚と繊細な文体で、愛と優しさを問い直し、時代の感受性をとらえたロングベストセラー。泉鏡花賞・「海燕」新人文学賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
55
福武文庫版では「キッチン」「満月」、「ムーンライト・シャドー」の3篇を収録。表題作「キッチン」は、1987年の作品なのだが、今もみずみずしく新鮮な輝きを失わない。「海燕」新人文学賞を始めとして、いくつかの文学賞を受賞したが、ほんとうに新しい作家が現れたという感じだっただろう。2012/04/28
matsu04
53
独特なムードのある3編。とても身近で大切な人の死がもたらすどうしようもない寂しさ、孤独感。あまりにも深過ぎる想い、張り詰めるような感情。そして、そこからの再生…。2016/06/28
ハイカラ
49
『ムーンライト・シャドウ』も面白かったけれど、やっぱり『キッチン』『満月』のほうが良い。読めば台所が大好きになること請け合い。カツ丼がこんな感動のアイテムになる小説は他にないでしょうな。たぶん。2016/08/09
カカシ
41
★★★★★ 再読。言わずと知れたばななさんの代表作。本の整理をする際も、ずっと手元に残してきた大切な一冊です。肉親を亡くすこと。この世に一人になるということ。幸せなことに、私は本当のところでまだその意味を理解出来ていないと思う。ふとした瞬間に幾度も底まで沈み、悲しみ、苦しむ。物語は静かに進みますが、言葉では表せない喪失感がそこにはありました。人は別れを選べない。でもいつか必ずやって来る「その時」に向け、少しだけ勇気を貰えた気がします。ご飯を作って食べて眠る。そんな当たり前な日常が1日も長く続きますように。2016/03/18
hitomi.s
39
高校生だった(と思う)わたしは、 どんな気持ちで読んだんだろ。 いま思う「苦しい時間」の真っ只中にいた頃。 どうにかこうにか、この歳まで来ることが出来て、きちんと通過してきた事実が、すこしだけ誇らしく思えるような本だと感じるまでになりました。 「、」や「。」の使い方が、心地よく、 ちょうどよく、やさしくさせてくれました。 日焼けしたこの本のきたなくなった感じと同じ時間、進んできた。 なんか、うれしくおもいました。2017/02/13