内容説明
脳死や臓器移植をめぐる論議は、科学的な観点に依存するあまり、日本人の伝統的な身体観念との接点を失った。愛する親族の遺族を物質的に扱われることを厳然と阻む日本人の心性とは?医療を文化人類学のフィールドとして捉え、現代医療が見失った日本文化の独自性を明らかにし、混迷の中に新しい視座を提示する快著。
目次
1 日本人の遺体観念(日本人と遺体;「死」の観念と臓器移植;献体と解剖;身体についてのイメージと観念)
2 医療と死(がんの「告知」;臓器移植―生と死の論理;医療現場―生と死のジレンマ)
3 病気の意味づけ(病気を語る;病気をめぐる自己と他者;病気と偏見)
感想・レビュー
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pinoo
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日本での脳死者への眼差しや終末期医療の状況は医療先進国の中でも特異な状況を呈していたがそれを日本人の死生観や遺体観から説明した本。村上興匡さんや山田慎也さんの本と合わせて読むと日本人の死生観、葬送儀礼のあり方が伝統的にはどうであったか、また近代化に伴いそれがどう変容したかについて概観をつかむ事ができると思う。問題はその後、つまり死生観とそれが依拠する種々の儀礼、それを担った地縁血縁共同体、これらが解体した後、我々のいわば根無し草の死生観は現在どうなりつつあるのか。酷く捉え難い物になったように思う。2017/02/07