完璧な病室

完璧な病室

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  • サイズ B6判/ページ数 187p/高さ 20X13cm
  • 商品コード 9784828823119
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

ガラス細工のようにすずやかに生きていけたら…生活を拒絶した無機質な空間に現代の愛の病理を描く第101回芥川賞候補作を含む第1創作集。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たいぱぱ

65
ふたつの短編が収めらてた小川さんのデビュー作。性の匂いを強く感じたので少し驚いた。「完璧な病室」の主人公は有機質を嫌悪し、無機質の殻(病室)に閉じこもりたがる。「揚羽蝶が壊れるとき」の奈々子は無機質の殻(老人施設)に祖母を預けた事に自己嫌悪している。正反対の方向だがふたりとも病んでるのは同じだ。現在の小川さんの静謐で美しく、そして残酷な世界観はないけれど、それに通じる原始的な宇宙の様なものは感じられた。ただここには美しさが欠けているので読んでいて何処かに閉じ込められた感じがして息苦しくなる。2021/07/17

クリママ

44
読み始めてすぐに思う。これは好きなやつだ。残りのページを確かめながら、好きなままで終わってほしいと思う。弟の入院。なんでもなかったときはなんでもなかったのに、命が区切られたとたん愛しさが募る。母と暮らした薄汚い食卓と、弟のいる清潔な病室。ボストンバッグを枕の上に置いた、だけに違和感があったが、ずっと好きなままだった。でも、結末は置いて行かれた。短編2編。「完璧な病室」「揚羽蝶が壊れる時」2018/03/23

aiaimo`olelo

30
デビュー作『揚羽蝶が壊れる時』と、表題作の2篇を収録。大学の卒業論文を書き直した『揚羽蝶…』で海燕新人文学賞を受賞し、以降に続いていく小川さん作品群の まさにスタート地点を覗いてきた。「完璧な」集合体である社会の中心から心ならずも離れてしまう、そんな「完璧でない」どこかしら何かが欠けている人物の哀しさや淋しさというものを、否定することなく訥々と優しく書き上げる小川さん。その世界観は原点からすでに始まっていた。小川さん自身もおそらく完璧ではないのだろう。だからこそ、そんな小川さんが私は愛おしくなるのだ。2021/07/17

さく

24
読書メーターではno imageだが、表紙の雰囲気にぴったりの、じっとりとした、少しずつ病んで壊れていくような短編2つ。息苦しい。出てくる食事が本当に不味そう。生活感のない病室。死に向かう、愛しい弟だけがいる空間。新天地に入れられた祖母。自分の内側に確かにあるもう1つの命。正常と異常、真実と幻想の境界線はあやふやで、誰にも決定できない。2016/04/17

エムパンダ

16
1989年刊行の2篇。両方ともたった1人の家族との縁が薄らいでいく。夫や恋人はいるが、精神的に独立して孤高に孤独に生きている印象。「完璧な病室」では21歳弟を亡くす。主治医の孤児院の話が別離を心構える中で染み込んでくる。「揚羽蝶が壊れる時」では認知症の祖母を施設に預ける。正常と異常のあわいに揺れ動く心情が痛々しい。自分の家族との別れを想像せずにはいられず、壁を乗り越えるように読んだ。2021/09/17

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