白河夜船

白河夜船

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  • サイズ B6判/ページ数 211p/高さ 20X13cm
  • 商品コード 9784828823065
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

ただひとつ、ずっとわかっていることは、この恋が淋しさに支えられているということだけだ。この光るように孤独な闇の中に2人でひっそりいることの、じんとしびれるような心地から立ち上がれずにいるのだ(「白河夜船」)。あの時、夜はうんと光っていた。永遠のように長く思えた。いつもいたずらな感じに目を光らせていた兄の向こうには、何か、はるかな景色が見えた(「夜と夜の旅人」)。また朝になってゼロになるまで、無限に映るこの夜景のにじむ感じがこんなにも美しいのを楽しんでいることができるなら、人の胸に必ずあるどうしようもない心のこりはその色どりにすぎなくても、全然構わない気がした(「ある体験」)。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

やすらぎ 🍀安寧祈願🍀

174
夜の果て。途中には微かな光があったのに。突然の別れに薄闇も淡い空も厚い雲に閉ざされていく。停滞。眠り続けていても瞼に朝が映る。現実を認めたくはないから開けようとはしないけど。夢の中に沈む遠い月をどこまでも追いかけて夜の底で染まる碧。もう花は俯き植物は萎れてしまっている。ここに雫は落ちてこないから。私はいつまでもここから見える一つの星だけを見つめている。薄れゆく意識の中で浮かんでは消えていき、包まれては締めつけていく。この夢の続きは永遠に始まらないの。あの瞳に見つめられたら電話のベルさえも聞こえなくなった。2019/12/24

催涙雨

52
夜やトンネル、霧の中みたいなちょっとした暗闇から抜け出していく、そんな静謐さとあたたかみを感じる短編集。「ある体験」はいまひとつ好みではなかったのだが、あとのふたつはすごくよかった。特に「夜と夜の旅人」はほんとうにすばらしかった。死生観や存在の理由、その人の在り方だとか、そういう抽象的な物事について、朧気でありながら確かに心に染み入ってくるものがこの作品にはある。2019/03/14

Kumiko

28
再読。この頃のばなな作品…当時ティーンエイジだった私に、一歩踏み出して大人の感性を磨いてごらん、と未知の領域に誘ってくれるランプのようなものだった。今読み返すと、当時「おっとな〜」と思っていた登場人物が押し並べて20代だということに驚く。しかしそれでも、その若い主人公達がある意味老成し疲れ果て、眠るしかなかったり、雪の中彷徨い歩くしかなかったりする、その絶望をさらっと描いている筆力に見入ってしまう。ばななさんも若くその若さの勢いで描いているように思えて、その実底なしの暗い深淵も感じる不思議で大好きな作品。2022/05/05

アコ

21
3篇収録。30年前に書かれたものを20年弱ぶりに再読。人間の欲求でもある眠り。やさしく丁寧な言葉選びや神秘的な雰囲気を懐かしく思う。しかし昔のような沁み渡るかんじはなく、淡々と読み終えてしまった。俗世とつかず離れず、たゆたうように生きていく感覚からは遠いところに来てしまったのかも。2019/01/20

momogaga

15
闇を抱えた主人公たちが再生していく物語。装丁が暗闇を表現しているのかな。2015/06/16

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