内容説明
いま、健康幻想が一人歩きしている。喫煙は他者への迷惑、終末期医療の安楽死・尊厳死は合法化されるべきであり、脳死・臓器移植は促進される必要がある、という世間の常識の背後でいったい何が起きているのか。『健康幻想の社会学』の続編として編まれ、治療国家の内実をさまざまなケーススタディをとおして解明した医療社会学の新領域。
目次
序章 原発人災から親鸞を想い、優生批判にいたる
第1章 消える“老人”・消される“老人”―「死なせる医療」とアウトサイダー
第2章 “老い”の可能性とエイジズム―「社会問題としての高齢化社会」論批判
第3章 逸脱の医療化と医療の逸脱化
第4章 「当事者」概念をこえて
第5章 「もつこと」と「あること」―(いのち)を考える
第6章 医療的「知足安分」主義と優生思想
著者等紹介
八木晃介[ヤギコウスケ]
1944年京都市に生まれる。1967年大阪市立大学文学部(社会学専攻)卒業。1967‐1991年毎日新聞記者(千葉支局、東京・大阪両本社学芸部)。1992年花園大学文学部教授・同学人権教育研究センター所長。2010年花園大学特任教授・同学人権教育研究センター研究員、現在にいたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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10
他著での批判が鋭いなと思ったので買ったが、この本に関してはちょっと編集力が足りない。批評社さん、もっと整理してあげたら良かったのに。その上で、医療制度と優生思想についてリンクさせての展開は面白い。だが、多分にバイアスがかかっていると思う。それは著者が親鸞に思想共鳴する事に代表される、なすがままなるがままに現実をみるニヒリズムであり、厭世思想だ。これでは社会を変革する力とはなり得ない。積極的に現実を変えゆかんとする思想に著者は根幹をすえるべきだとおもう。知識人の厭世的な思想ほど世の中を退廃させるものはない。2020/12/24