内容説明
司馬遼太郎の作品『故郷忘じがたく候』にある一行の引用からこの物語ははじまる。それまで慣れ親しんできた司馬遼太郎の作品群への憧憬の念は、日本による朝鮮の植民地支配を「たかが三十余年」と断じたとき、悉く喪失する。その重苦しい意味を心の奥深くに刻んだときから、侵略者として日本人である自分の出自と重ね合わせて、己を苛む長く苦しい旅がはじまる。幼少時に育った遥かなる朝鮮での体験を踏まえて『坂の上の雲』に潜む蔑みの思想と対をなす「日本の優位」という国家幻想を緻密に検証し、維新から今日に至る近代化のネジレ構造を照射する。
目次
1章 明治維新(ねじれた変革;民衆の悲鳴 ほか)
2章 明治新政府(天皇をかつぐ;征韓論争 ほか)
3章 日清戦争(征韓のはじまり;奇襲で火ぶたを切る ほか)
4章 日露戦争(帝国主義戦争;民衆同士が手を結ぶ時 ほか)
5章 東方の覇者(講和条約;日露兵士の抱擁 ほか)
著者等紹介
備仲臣道[ビンナカシゲミチ]
1941年、朝鮮忠清南道大田生まれ。山梨県立甲府第一高校卒、山梨時事新聞記者、同労働組合書記長。月刊「新山梨」編集発行人。1998年から2007年まで「高麗美術館館報」に高麗・李朝美術に関するエッセーを連載。2002年、第六回岡山・吉備の国「内田百〓(けん)文学賞」優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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