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メンタルヘルス・ライブラリー
統合失調症の快復―「癒しの場」から

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  • サイズ A5判/ページ数 192p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784826504232
  • NDC分類 493.76
  • Cコード C3047

出版社内容情報

 病いの実態を正確に表現していないばかりか、偏見を助長し、当事者の社会参加の阻害要因になっていた「精神分裂病」という病名が、著者の関わる日本精神神経学会により「統合失調症」と変更されたことは記憶に新しい。統合失調症は、主に思春期から青年期にかけて切っ掛けもなく発病し、考えや気持ちのまとまりが欠け、ひきこもり、意欲の低下、幻覚、妄想などの症状を引き起こす病いである。その症状には患者の置かれている状況~個人の満たされない欲求のレベルから、精神障害者が担わされている社会の中での立場までが常に反映される。著者の大学病院での10年、精神科リハビリテーション施設での10年、総合病院での10年の、計30年あまりにわたる経験をもとに、統合失調症の治療とは何か? 統合失調症から快復するとはどういうことなのか? という深淵なる問いに迫り、病いが人生にもたらす意味とは何かを考える。
 統合失調症の治療とリハビリに心を砕いた医師の30年間の記録。

●はしがき
序 章●
1・町の風景と溶けあう障害者/2・病院に捨てられた障害者/3・精神科病院の内と外/4・薄れゆく人と人のつながり/5・絶望から自死へ/6・支えあう障害者
■第1部 地域にて
第1章●統合失調症の精神療法
1・はじめに/2・事例/3・治療関係の推移/4・治療者・患者関係分析の試み/5・おわりに
  コラム●統合失調症
第2章●幻覚・妄想を訴える患者の面接
1・はじめに/2・急性精神病状態/3・慢性精神病状態/4・おわりに
  コラム●『構造転移』ということ
■第2部 病院にて
第1章●大学精神科病棟の開放化と慢性統合失調症
1・はじめに/2・治療の場としての大学病院/3・事例‐慢性化と妄想形成/4・事例の教えるもの/5・開放化と病棟の活性化/6・事例‐個別看護とチーム医療/7・個別看護その後/8・おわりに
第2章●病院の治療構造と慢性化
1・慢性統合失調症/2・インスティチューショナリズム(施設症)/3・薬物療法/4・治療構造と慢性化
第3章●開放化運動の思想と実践
1・はじめに/2・開放化運動の歴史/3・開放化運動の時代背景/4・開放化運動の思想/5・・病院医療の変革を
  コラム●援助者が援助するのを援助する
第2章●保健所における社会復帰相談指導事業の意義と課題
1・保健所における精神保健活動の歴史/2・公衆衛生としての精神保健/3・社会復帰相談指導事業について/4・援助者の課題
第3章●患者をとりまく人びと 141
■第5部 「統合失調症」がなおるということ
第1章●統合失調症の長期経過
1・はじめに/2・調査対象/3・調査結果/4・地域における調査結果との比較/5・おわりに
  コラム●病いが癒えるということ
第2章●快復につながる力
1・快復過程の見えなさ/2・治るとはどういうことか/3・重層的アプローチ/4・治療的同伴者
終 章●統合失調症と加齢
1・晩発統合失調症/2・欠陥治癒/3・晩期軽快/4・生き抜くことの意味
●引用文献
●あとがき



「精神分裂病」が「統合失調症」という病名に変更されました。
「精神分裂病」という呼称は、病いの実態を正確に表現していないばかりか、スティグマとなって長いあいだ偏見を助長し、当事者の社会参加の阻害要因となってきました。
 また、診療の現場では病名の告知がなかなか進まず、インフォームド・コンセント(説明にもとづく同意)が実践されにくかったことが指摘されています。
 日本精神神経学会は、全国精神障害者家族会連合会(全家連)からの要請を受けて、病名に関する委員会を設け、慎重に検討を重ねた結果「精神分裂病」を「統合失調症」に変更することを決めました。
 今後、「統合失調症」の病名が定着し、当事者のノーマライゼーションが一層進展することが期待されています。
 統合失調症は、おもに思春期から青年期にかけて、とくにきっかけらしいものもなく現れ、考えや気持ちのまとまりが欠け、ひきこもり、意欲の低下、幻覚、妄想などの症状をひきおこす病いです。
 近年の脳研究の進歩により、神経伝達物質のアンバランスが確かめられていますが、その所見が病いの原因なのか病いの産物なのかはいまだに結論が出ていません。
 統合失調症の症状には

●シリーズ『メンタルヘルス・ライブラリー』の13巻です。

*装丁 臼井新太郎
*装画 鈴木ちさ
*組版 字打屋

内容説明

精神科医療とは、「統合失調症の治療とは何か」「統合失調症からの快復とはどういうことか」「統合失調症が人生にもたらす意味とは何か」を問うことだ、といってもいいくらいなのです。なぜなら「統合失調症」はこころならずも踏み入れざるをえなかった人生のひとつの生き方なのですから…。「精神分裂病」から「統合失調症」に病名が変わっても、病いの快復に特効が期待できるわけではありませんが、病名に張り付いたスティグマや社会的偏見から身を守ることには大いなる意味があります。

目次

第1部 診察室にて(統合失調症の精神療法;幻覚・妄想を訴える患者の面接)
第2部 病院にて(大学精神科病棟の開放化と慢性統合失調症;病院の治療構造と慢性化 ほか)
第3部 デイケアにて(陰性症状の心理社会的治療;デイケア ほか)
第4部 地域にて(地域活動から見た再入院―過疎の村で出会った事例を通して;保健所における社会復帰相談指導事業の意義と課題 ほか)
第5部 「統合失調症」がなおるということ(統合失調症の長期経過;快復につながる力)
統合失調症と加齢

著者等紹介

浅野弘毅[アサノヒロタケ]
1946(昭和21)年宮城県生まれ。1971(昭和46)年東北大学医学部卒業。1983(昭和58)年仙台市デイケアセンター所長。1989(平成元)年仙台市太白保健所長兼仙台市デイケアセンター所長。1993(平成5)年仙台市立病院神経精神科部長兼老人性痴呆疾患センター室長。2004(平成16)年東北福祉大学総合福祉学部教授兼認知症介護研究・研修仙台センター副センター長
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。