出版社内容情報
若者のうつ、中年期のうつ、老年期のうつ状態の増大傾向は、「うつの時代」というやり直しがきかない社会の閉塞状況を反映したかのようである。年間3万人(実際は倍近い)の自殺者や過食・拒食症の子どもや大人、リストカッターという自傷行為の背後に「うつ」が忍びより、「うつ」の諸症状が「人格障害」とラベリングされている可能性もある。「やり直しがきかない」「取り返しがつかない」という心情こそ「とらわれの病理」である「うつ」の病理そのものである。社会学も交えた幅広い視点からこの時代の「うつ」の心的構造を解き明かす。
巻頭言 「うつ」にとらわれた時代 ●高木俊介(たかぎクリニック)
座談会 拡散するうつ病~depressionと「ありうべき社会」●宮台真司(社会学者、東京都立大学助教授)×香山リカ(精神科医、帝塚山学院大学人間文化学部人間学科助教授)×高岡 健(精神科医、岐阜大学医学部付属病院)×高木俊介(精神科医、たかぎクリニック)
老いを診る憂うつ―ぼけ予防・病名告知・臨終のとき ●山崎英樹(いずみの杜診療所)
アートとうつ病 ●彦坂尚嘉(美術家)
現代うつ病考 ●墨岡 孝(成城墨岡クリニック)
青年たちのうつ―ボーダー、リストカット、そして現代社会 ●木村一優(陽和病院)
新自由主義下の拒食と過食―うつ病と摂食障害の関係 ●高岡 健(岐阜大学医学部付属病院)
うつ、今昔―松本雅彦氏へのインタビュー ●[聞き手]高岡 健+高木俊介
コラム・連載
[視点…2]精神保健福祉法2005年改正の争点―解体・再編か? マイナーチェンジか? ●岡崎伸郎
[引き抜きにくい釘…第5回]あからさまな花びら ●塚本千秋(岡山大学教育学部)
[老いのたわごと…第24回]忘れられない人々―(1) ●浜田 晋(東京都・浜田