シリーズ「教育改革」を超えて<br> 『心のノート』研究

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シリーズ「教育改革」を超えて
『心のノート』研究

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  • サイズ A5判/ページ数 213p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784826503761
  • NDC分類 375.35
  • Cコード C1037

出版社内容情報

心身の呪縛から、個の自立へ。
斎藤貴男による「なぜ、今『心のノート』なのか」を収録、モラルなき「教育改革」のモラルを問う!

『心のノート』は、子どもたちに〈自分で〉書き込ませながら、規範意識を内面化させる。河合隼雄によるユング心理学を応用した一種のマインド・コントロールである。教育基本法「改正」論は、その論拠に子どもたちの規範意識や道徳心の低下などモラルの崩壊を掲げる。『心のノート』導入と教育基本法「改正」は、表裏一体である。

 グローバリズムの猛威を背景に、競争、効率、サバイバル、自己責任という企業社会の論理が、今や、教育の世界にも侵入している。サバイバル競争と成績至上主義が、教育の場からモラルを喪失させようとしている。現場教師による『心のノート』の危険性についての緊急報告。



まえがき

■第1部
〈対談〉なぜ、今『心のノート』なのか
斎藤貴男+柿沼昌芳+永野恒雄(司会)

三〇〇万の都民の意識/「心の東京革命」の危険性/管理されるものは管理する/不平等の拡大/教育改革と新自由主義/牙を抜かれる教師/ルールとマナー/保守主義的市民権論とハイパー資本主義/『心のノート』の背景/『心のノート』の限界/『心のノート』に抗する論理/きれいな言葉・きたない言葉

■第2部
『心のノート』を検証する

▲第1章 子どもの心と乖離する『心のノート』……石澤雅雄
子どもは「わるさ」もしながら大きくなる/『心のノート』は「しなやか」か?/子どもたちはけな気に生きている

▲ 第2章 学級の子どもと『心のノート』を付き合わせて考える……嘉納英明
階層分化と青少年の犯罪/ミノルとの出会い/現実の教育場面に『ノート』は応えているか/「よりそうこと、わかり合うことから」を考える/『ノート』のこれから

▲ 第3章 「きれいごと」がほんとうらしく見えるとき……尾崎光弘
冷笑をもって適当に/「きれいごと」では解決しない/子どもは、悪を生きる/子どもたちは、やさしくおとなしくなって3部 『心のノート』の背景

▲ 第8章 『心のノート』が登場した背景……金子隆弘
戦後道徳教育の歴史と『心のノート』/『心のノート』が登場した直接的な背景/『心のノート』の理論的背景―アメリカの人格・道徳教育/戦後形成された国民意識を時間をかけて大きく変えることが目的/学習指導要領道徳編と『心のノート』

▲ 第9章 河合隼雄の『心のノート』作成意図……金子隆弘
『心のノート』は「若き国民の義務」(二一世紀懇)/「神の国」発言と河合隼雄/河合隼雄と二一世紀版『期待される人間像』/河合隼雄氏が考える「新しい個人主義」という人間像/「民族意識を高める意図」は本当にない、といえるのか?/子どもは、国や大人の思惑にそって〈育てあげられる〉存在ではない

▲ 第10章 「モラル」を弄ぶ『心の東京革命』……柿沼昌芳
「叱られる権利」のみを強調/家庭教育に侵入する東京都/コンラッド・ローレンツの引用/体罰を肯定する都知事/教育委員会が推進する『心の東京革命』/「マナーからルールへ」

▲ 第11章 教育政策の動向と『心のノート』 ……青木茂雄
臨教審答申と 新しい公共 /「新しい荒れ」と「心の教育」/教育改革

 二○○三年の三月二○日という日は、アメリカが国際世論を無視し、イラクに対する攻撃を開始した日として、そしてまた、中央教育審議会が戦後教育を否定し、教育基本法の「改正」に向けた答申を提出した日として、永く記憶されることになるだろう。
「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」と題された同日の中教審答申は、子どもの現状について、「青少年が夢や目標を持ちにくくなり、規範意識や道徳心、自律心を低下させている。いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在しており、青少年による凶悪犯罪の増加も懸念されている」と捉えた上で、これからの教育は、「道徳心や倫理観、規範意識をはぐくむことが求められている」ので、今後、「宗教的情操に関連する教育」や「道徳を中心とする教育活動」の一層の充実を図る必要があると述べている。教育基本法「改正」論の根拠の一つとして、同答申が、子どもたちの規範意識や道徳心の低下をあげていることに注目しなくてはならない。
 こうした流れと並行し、文部科学省は、巨額の費用をかけ、検定も経ずに『心のノート』を作成し、二○○二年春、これを全国の公立・私立の小中学ていることは明らかである。これはまた、道徳教育、宗教的情操教育、そして、特定の宗派を排除した「透明な宗教教育」が学校教育に導入される危険性をも指し示している。これは、「新しい国家神道」と位置づけるべきではないのか。
 子ども達の中にはモラルの「崩壊」があり、それに対する対応が緊急の課題であるとしても、「宗教的情操教育や道徳心、自律心の涵養」といったことが、その対応となりうるのだろうか。それによって、現在の子どもたちの状況が改善されるのだろうか。
 今日の子どもたちに見られる逸脱した行動は、「物質的豊かさと精神的貧困」、「将来が見えない」、「仲間と関われない」、「他の人を思いやれず自分とは無関係と考える」などの状況に起因しているのであって、一見モラルが欠落しているようにも見えるが、すべてをモラルの問題として処するのは間違いであろう。
 また、『心のノート』の記述には、「私たちの心を育ててくれるふるさと」、「私たちの国の文化に親しもう」、「国を愛する心」(小学校三・四年生)と続く一連の流れがある。
 いま、地域コミュニティが崩壊し、誰しも地域の教育力に対して不安感を抱いている。マスコミなどによって、子ども道徳教育も「注入的教育」に終始してきた。文科省はそのことを「反省」し、『心のノート』については、自分で書き込みながら自分の価値観にしていくという手法に転換した。意見表明などの自主的活動が身についていない今の子どもたちにとって、自分の心を「主体的」に書き込めるこのノートは、受け入れられてしまう素地がある。
 斉藤貴男氏は、その著書『精神の瓦礫』(岩波書店、一九九九年)の中で、バブル崩壊後の日本における瓦解した精神状況を描写している。今やモラル無き企業社会が到来し、銀行をはじめ大企業のトップに、モラルの喪失が見られることは誰しも認めることである。
 そうした中で、モラル崩壊の最先端をいく一部議員やキャリヤ官僚が戦前の教育勅語や修身へのノスタルジアを語るにとどまらず、モラル崩壊を教育基本法の「改正」の根拠として利用している。今日のモラル崩壊の主たる要因は、むしろ倫理観を失った企業社会にあると捉えるべきであるのに、それをあたかも、学校教育にすべての責任があるかのように言う論者がいる。これは、自らの責任を子どもたちに転嫁しているだけではないのか。
 さらに、教育の場に競争・効率・自己責任などという経済の論理が導入

新シリーズ【SERIES「教育改革」を超えて】の第1巻です。

内容説明

『心のノート』は、子どもたちに「自分で」書き込ませながら、規範意識を内面化させる。河合隼雄によるユング心理学を応用した一種のマインド・コントロールである。教育基本法「改正」論は、その論拠に子どもたちの規範意識や道徳心の低下など、モラルの崩壊を掲げる。『心のノート』導入と教育基本法「改正」は、表裏一体なのである。グローバリズムの猛威を背景に、競争、効率、サバイバル、自己責任という企業社会の論理が、今や、教育の世界にも侵入している。サバイバル競争と成績至上主義が、教育の場からモラルを喪失させようとしている。現場教師による『心のノート』の危険性についての緊急報告。

目次

第1部 対談 なぜ、今『心のノート』なのか(斎藤貴男;柿沼昌芳;永野恒雄(司会))
第2部 『心のノート』を検証する(子どもの心と乖離する『心のノート』;学級の子どもと『心のノート』を付き合わせて考える;「きれいごと」がほんとうらしく見えるとき―『心のノート』の外し方 ほか)
第3部 『心のノート』の背景(『心のノート』が登場した背景;河合隼雄の『心のノート』作成意図;「モラル」を弄ぶ『心の東京革命』 ほか)

著者等紹介

柿沼昌芳[カキヌママサヨシ]
1936年生まれ。元東京都立高校教諭。現在、全国教育法研究会会員、明治大学・中央大学などの非常勤講師

永野恒雄[ナガノツネオ]
1949年生まれ。都立大崎高校教諭。全国教育法研究会会長、日本教育法学会理事、歴史民俗学研究会会員
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。