出版社内容情報
国や企業や幻の家族よりも〈個〉を上位に置くメンタルヘルスの確立を目指し、〈正常―異常〉〈健康―疾病〉という枠組みを超えて、オルタナティブな枠組みを試行する。WPA(世界精神医学会)横浜大会に向けた総力特集号。吉本隆明「僕のメンタルヘルス」他。
[巻頭インタビュー]
僕のメンタルヘルス 吉本隆明(聞き手・森山公夫)
[巻頭言]
グローバル・メンタルヘルス・クライシス 高岡健
メンタルヘルスの多面性と両義性 石川憲彦
育児不安と虐待、その背景を通して見えてくるもの~乳幼児のメンタルヘルスについての一考察 田中浩一郎
思春期危機と保護するメカニズム 木村一優
大学生のメンタルヘルス~現状・課題・視角 上田裕美+小林孝雄+岡村達也
職場のメンタルヘルス 浅野弘毅
家族のメンタルヘルス 犬飼直子
高齢者のメンタル・ヘルス 広田伊蘇夫
身体疾患とメンタルヘルス~病とともに生きるということ 高田知二
死のメンタルヘルス 阿保順子
脳死・移植に関連するメンタルヘルス~菊池寛、三島由紀夫、柳田邦男らの作品からのコラ-ジュ 衛藤俊邦
コミュニティメンタルヘルス 氏家靖浩
メンタルへルスと行政~予防神話を超えて 黒川洋治
看護者のメンタルヘルスを考える 河野節子
犯罪被害とメンタルヘルス~被害者と援助者を襲う「離断」について 岩井圭司
戦争・宗教と精神医学~歴史の再検証 小俣和一郎
[座談会]
メンタルヘルスを語る~医
私は何を主張したいのだろうか。それは、国家や企業や幻の家族よりも〈個〉を上位に置くメンタルヘルスの確立である。
世界―日本を通じた時代の転換は、こころの領域にも大きな変化をもたらしつつある。それは、生誕から死までのすべてを覆うものである。このような変化の中では、精神医療も狭義の医療のみにとどまることはできず、広義のメンタルヘルスの領域を開拓することによって、人々の需要に応えることが求められている。かつての疾病予防を目的とする考え方や、〈正常さ〉の保持を目的とする考え方を超えて、人間が伸びやかに生きていくために必要十分な考え方が求められているということだ。そのためには、〈正常―異常〉〈健康―疾病〉という枠組み自体に疑問を差し挟み、新たな理論と実践を積み重ねる歩みを開始する必要があるだろう。
しかし、これまでのメンタルヘルス論では、現在の歴史的変化に即応できないことも自明といわざるをえない。なぜなら、そこには個人・家族・社会の旧い神話的枠組みを前提とする適応理論しか記されていないからである。ここに、『精神医療』誌が、メンタルヘルスについて特集する目的と意義がある。
『精神医療』総特集《メンタルヘルス・
『精神医療』初の総特集号です。吉本隆明氏インタビュー「僕のメンタルヘルス」他。