精神医療  4-26

精神医療  4-26

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  • 商品コード 9784826503501
  • NDC分類 493.7
  • Cコード C3047

出版社内容情報

 精神障害者の犯罪率は一般犯罪に比べ極めて少ないが、大阪・池田小学校の事件以来「触法精神障害者」法制化の動きが急浮上した。「心神喪失者の処遇法案」は、再犯の恐れの有無を基準に裁判官と精神科医が入・退院を命じ、保護観察所が退院後のケアに関与するという新しい制度の導入である。しかしそこには判断基準の不明確さや司法と精神医療が再犯の恐れの可否をどう判断するのか等、根本的な問題点が多く存在する。
 「重大犯罪を犯した精神障害者」に、どう向き合うかを多角的に論じた総力特集。

 私は、京都府立洛南病院では「重大犯罪を犯した精神障害者」や「覚せい剤精神病者」の治療を公的病院の役割と自覚し取り組んできたと自負している。しかし今後もこのような治療的態度をとり続けることができるだろうかという懸念を拭い去ることもできない。
 理由の一つは、近年顕著になっている中堅医師のクリニック開業ラッシュと若手医師の精神科病院離れ(?)である。地方公務員であるゆえの種々の制約が強まり、勤務条件などでは魅力のある職場とは言い難くなっている。私たちの後に続く精神科医達が長年勤務し、治療経験を蓄積できるかどうかである。
 二つには、治療困難な患者の占める割合が年々増加していることである。外来患者約1300人のうち覚せい剤、有機溶剤などの薬物関連疾患は、4~5%を占めている。警察や検察から刑事訴訟法に基づく照会が毎年20件以上ある。毎年2、3人の殺人または傷害致死の犯罪歴を持つ精神分裂病圏の新たな入院があり、そのなかには病状ゆえに退院困難な者もいれば、治療者として再犯を畏れるが故に退院要求を拒否し続けている者も含まれている。
 三つには、毎年約10億円近い赤字経営であり、現在のマンパワーを維持することがやっとである。
通巻101号を数える『精神医療』誌。当26号では、京都府立洛南病院の岡江晃さんの編集で、「司法と精神医療」の同時代的問題に迫ります。