内容説明
科学の世紀を疾走した高木仁三郎の思索・研究と運動の旅程。あきらめから説し、“希望”の種子をまき、育てていこうと呼びかけ、生涯を脱原発に捧げた“市民科学者”の全容を記録する。プルトニウム論を中心に構成。
目次
プルートーンの火
プルトニウムの恐怖
証言「もんじゅ訴訟」
高木仁三郎が語るプルトニウムのすべて
1997年ライト・ライブリフッド賞受賞記念プルトニウムと市民のはざまで
共著書の論文(プルトニウムの毒性について;プルトニウム時代に生きる ほか)
未公刊資料(死をみつめながら―わが闘病記;友へ―高木仁三郎からの最後のメッセージ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまやま
10
プルトニウム原爆は長崎に炸裂したが、その準備過程では元素「発見」者のシーボーグらがマンハッタン計画に加わり濃縮ウランを使わずとも原爆が完成できるよう研究が進められる。その後、原子力発電が各地で行われるようになると、その副産物としてのプルトニウムの活用が試みられ、いわゆる核燃料サイクルが立案される。著者は自然の摂理に反することは無理があると様々な視点から原子力の活用の困難さを語る。当時危惧したことは、スリーマイル、チェルノブイリによって次々と不幸な形で示されていき、死後、福島での原発事故が発生する。2020/10/18
はる
6
原子物理学者である高木氏は高速増殖炉原子力発電の燃料であるプルトニウムの毒性を訴え解説している。放射性物質は数万年に渡りアルファ線を放出し皮下0.04mmに強烈に電離作用し続け、細胞を形成する物質の酸化還元反応を惹起し新たな物質に変え、人体の化学結合を破壊する。遺伝子は切り裂かれ正常な遺伝子を残せなくなる。十年二十年後に病理が出現する毒性を有する、これが晩発性としておこり得る原子力の問題だという。既に氏は故人であるけれど原発の問題はいつも新しい。2020/10/11