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いいがかり―原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走

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  • サイズ B6判/ページ数 335p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784822815295
  • NDC分類 070.21
  • Cコード C0036

出版社内容情報

朝日新聞の「吉田調書」報道はなぜ取り消されたのか、報道の自由はどうなるのかなど、日本の言論状況の危険性を、61名が問う!

この事件は、歴史の折り返し点になるかもしれない……。
 2014年5月20日、朝日新聞は「吉田調書」を1面トップで報道した。吉田昌郎氏は福島第一原発事故当時所長であった人物。政府事故調査・検証委員会が聞き取りをした調書は、極秘扱いされてきたのだが、それをスクープしたのだ。
 しかし、従軍慰安婦報道、池上コラム掲載拒否問題と絡めて右派メディアなどからの峻烈なバッシングが始まったために、耐えきれなくなった朝日新聞社は「吉田調書」報道を取り消し、取材記者らを処分した。
 なぜ、「吉田調書」報道は取り消されたのか。報道の自由はどうなるのかなど、日本の言論状況の危険性を問う。

プロローグ いったい何が起こったのか 編集委員会

第1章 「吉田調書」記事取り消し事件を考える
      「吉田調書」記事取り消し事件の論理的解剖──花田達朗(社会学研究者、早稲田大学教授)
      事故の解明に風穴を開けた「吉田調書」報道──田辺文也((株)社会技術システム安全研究所主宰、元原子力研究開発機構上級研究主席)
      PRC見解─事実と推測の混同──海渡雄一(原発事故情報公開弁護団、脱原発弁護団全国連絡会共同代表)
      調査報道の意義──魚住昭(ジャーナリスト)
      曲がり角としての2014年──金平茂紀(ジャーナリスト)
      報道は誤りではない──山田厚史(デモクラTV代表、元朝日新聞編集委員)

第2章 私はこう思う
      いいがかり──森まゆみ(作家)
      私はこう思う
       何かがおかしい──ピーター・バラカン(ブロードキャスター)
       原子力マフィアと吉田調書問題──小出裕章(京都大学原子炉実験所)
       本領に背く取り消し──佐高信(評論家)
       ブンヤの精神に立ち返れ──三上智恵(ドキュメンタリー監督)
       メディアは反政府でなければならない──西山太吉(元毎日新聞政治部記者)
       知る権利の立場から──大石芳野(写真家)
       調査報道を葬ってはいけない──木村結(東電株主代表訴訟事務局長)
       情報や被害を隠すのは誰か──馬奈木厳太郎(弁護士、「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟弁護団事務局長)
       被爆二世として考える「二つの沈黙」──平野伸人(元全国被爆二世団体協議会会長)
       よくぞスクープしてくれた──伴英幸(原子力資料情報室共同代表)
       「隠し得」を許せば未来は暗い──日野行介(毎日新聞特別報道グループ)
       おもてなしの欺瞞──渡辺寿(映画監督)
       腰巻きの紐あやうし!──中山千夏(作家)
       「吉田調書記事取り消し事件」の検証を──大石泰彦(青山学院大学法学部教授)
       「取材のプロ」として──高田昌幸(高知新聞、元北海道新聞)
       「凡庸な悪」の体現──北村肇(「週刊金曜日」発行人、元新聞労連委員長)
       OBから見た「オウン・ゴール」──柴田鉄治(元朝日新聞科学部長、論説委員)
       記者処分撤回し、原発マフィアについての調査報道を──浅野健一(同志社大学大学院教授(地位確認係争中))
       メディア底上げへ新聞社の垣根越える──大西祐資(京都新聞社編集局総務)
       バッシングという、集団の無責任さ──平井康嗣(「週刊金曜日」編集長)
       記者の取材過程を評価し、新聞労連特別賞──新崎盛吾(新聞労連委員長)
       異議あり! メデイアOB・OGから──伊田浩之(「週刊金曜日」副編集長)
       木を見せて森を見せず──山口二郎(法政大学教授)
       庶民のためのかわら版が読みたい!──松元ヒロ(スタンダップコメディアン)
       朝日問題と報道の在り方──室井佑月(作家)
       媚びるな、おもねるな──大谷昭宏(ジャーナリスト)
       卑しく恥ずかしい人間にはなりたくない──斎藤貴男(ジャーナリスト)
       掲載記事守れぬ姿勢こそ、最大の間違い──マーティン・ファクラー(ニューヨークタイムズ東京支局長)
       もっともらしい言葉に注意せよ──広瀬隆(作家)
       報道を「検証」すること──林香里(東京大学大学院情報学環教授)
       現場を歩く記者たちが、再生の担い手だ──寺島英弥(河北新報社編集委員)
       現場を萎縮させるな──篠田博之(月刊「創」編集長)
       筆を折ることは許されない──清武英利(ジャーナリスト)
       「幻のスクープ」にしてはならない!──田中伸尚(ノンフィクション作家)
       読者が見たいのは、記者のプレーだ──川村二郎(元「週刊朝日」編集長)
       負けるな朝日!──早野透(桜美林大学教授、元朝日新聞コラムニスト)
       朝日新聞記者と朝日新聞社員の違い──杉原洋(元南日本新聞編集局次長)
       決して、怯むまい──石井暁(共同通信編集局編集委員)
       極右政権・ネット右翼・劣化メディアの三位一体による朝日叩き──鈴木耕(編集者・ライター)
       ネトウヨ政治が生んだ21世紀の「マッカーシズム」──飯田哲也(環境エネルギー政策研究所所長)
       北星学園と植村隆さん──徃住嘉文(北海道新聞編集委員)
       ヘイトスピーチからは憎しみの連鎖しか生まれない──小野有五(北星学園大学教授)
       取材現場に広がる自粛──宮崎昌治(西日本新聞官邸キャップ)
       もう一つの「吉田」問題──大田昌秀(元沖縄県知事、沖縄国際平和研究所理事長)
       政府批判は新聞の存在証明──高嶺朝一(前琉球新報社代表取締役社長、ジャーナリスト)
       「人ごとの論理」を越えて──松元剛(琉球新報記者、編集局次長兼報道本部長)
       ふるさと沖縄、日本の平和が心配です──石川文洋(カメラマン)
       一人ひとりが守る「表現の自由」──山城紀子(フリーライター)
       「小さな民」の視点から──内海愛子(恵泉女学園大学名誉教授)
       マスメディアだけではだめだ──梓澤和幸(弁護士、NPJ代表)

第3章 ジャーナリズムの危機
      2014年はメディアコントロールの総仕上げだったのか──永田浩三(武蔵大学社会学部教授、ジャーナリスト)
      白虹筆禍事件再考──別府三奈子(日本大学大学院新聞学研究科/法学部教授)
      ジャーナリズムの危機と劣化する社会──野中章弘(アジアプレス代表、早稲田大学教授)

第4章 ジャーナリズムの改善
      組織ジャーナリズムはどう変わるべきか──花田達朗(社会学研究者、早稲田大学教授)

エピローグ これは言論弾圧だ──鎌田慧(ルポライター)

巻末資料
「吉田調書」報道記事問題についての申入書
「吉田調書」記事の取り消しに関する申し入れ書
朝日新聞旧友会からの訴え
「吉田調書」報道の継続を求め、担当記者に対する個人攻撃への適切な対処を求める要望書

【著者紹介】
『原発「吉田調書」記事取り消し事件と朝日新聞の迷走』編集委員会
2014年5月20日付、朝日新聞の「吉田調書」報道はなぜ取り消されてしまったのか。報道の自由、市民の知る権利とは何か。言論を取り巻く状況について広く考えようと、ルポライター・鎌田慧、早稲田大学教授・花田達朗作家・森まゆみを代表に結成。

内容説明

秘匿されていた、政府事故調査委員会の「吉田調書」を、暗闇から引きだして報道したのは、朝日新聞(2014年5月20日)だった。ところが、3ヶ月半経った9月になって、あろうことか朝日新聞は、一転してその記事を全面取り消し、木村伊量社長(当時)が記者会見をひらいて謝罪する、という無惨な結末となった。これはジャーナリズム史上空前の事件である。

目次

1章 「吉田調書」記事取り消し事件を考える(「吉田調書」記事取り消し事件の論理的解剖;事故の解明に風穴を開けた「吉田調書」報道 ほか)
2章 わたしはこう思う(いいがかり;何かがおかしい ほか)
3章 ジャーナリズムの危機(2014年はメディアコントロールの総仕上げだったのか;白虹筆禍事件再考 ほか)
4章 ジャーナリズムの改善(組織ジャーナリズムはどう変わるべきか)

著者等紹介

鎌田慧[カマタサトシ]
ルポライター。新聞記者、雑誌編集者などを経て独立。主著に『六ヶ所村の記録―核燃料サイクル基地の素顔』(岩波現代文庫、毎日出版文化賞)、『反骨のジャーナリスト市長―鈴木東民の闘争』(新田次郎賞、七つ森書館)など。「さようなら原発1000万署名市民の会」呼びかけ人など

花田達朗[ハナダタツロウ]
社会学研究者。早稲田大学教育・総合科学学術院教授、ジャーナリズム教育研究所所長。早大政治経済学部卒業、ミュンヘン大学大学院修了。東京大学大学院情報学環教授・学環長を経て、2006年より現職

森まゆみ[モリマユミ]
作家。1984年に地元で地域雑誌「谷中・根津・千駄木」を創刊、終刊の2009年まで編集人を務めた。現在、地域史アーカイブ「谷根千・記憶の蔵」を主宰する。2014年に「紫式部文学賞」を受賞。地域活動で建築学会賞、サントリー地域文化賞など。元文化庁文化審議会委員(文化財保護)、現在日本ナショナルトラスト理事。著書に『鴎外の坂』(文藝春秋、芸術選奨文部大臣賞)、『「即興詩人」のイタリア』(新潮社、JTB紀行文学大賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

81
最近のマスコミ、テレビは前からですが特に新聞は押しなべてレベルが下がっています。要するに拡販と宣伝料収入によって社員の高給をあがなっている事情からはしょうがないと感じます。この本を読むと、マスコミとそれに対してプレッシャーをかけようとする役所や政府との対決の一つのケースすだでぃとして読むことができました。2015/08/26

壱萬弐仟縁

29
海渡雄一氏の東電撤退問題の本質:労働者の命まで犠牲にする原子力技術のもつ究極の非人間性(063頁)。技術の一人歩き、暴走を食い止められないもどかしさ。取り消された記事で、東電社員が現場からいなくなると誰が対処するのか、という指摘は社会に突きつけている最重要課題。編集委員会の撤退の本質:問題は原発制御できる人員が残るかどうか(148頁下段)。問題は、言った/言わない、が、全員か/一部かの問題にすり替わったこと(149頁中段)。これは言われた方は覚えているが、言った方は忘れるという類のものではない。2015/07/23

Mao

6
朝日の記事取り消し、こういうことだったのか。 朝日新聞、311当初の報道姿勢にがっかりして、しばらくはプロメテウスの罠だけ読んでいたけれど、東京新聞に鞍替えしていたので、記事取り消し自体、よく知らなかった。 2章は同じことを多数の人が書いているので、もうわかったよ、と言いたくなり…飛ばし読み。  日本のジャーナリズムは生き返るのだろうか?  安保法制にしろ、新国立競技場にしろ、もう間に合わあない頃になってやっと慌てて書き始めるマスコミにはガッカリだ。 非難されることを極端に恐れているのか? 2015/07/07

アーク

3
日本のマスコミは水に落ちた犬を徹底的に叩くという安易な方法に飛びつく傾向がある。そしてその仕掛けを巧みに利用したのがアベ政権。朝日新聞という政権に都合の悪い存在の粗探しをして、読売・産経新聞という御用メディアにその一点を集中攻撃させた。本書はその攻撃の模様を水の中の残骸から描き出す。幸い朝日新聞はまだ存続しているけど、反体制というスタンスは既に形骸化して久しい。極右化して真珠湾攻撃でアメリカを一時的にねじ伏せた日本軍は、やがて戦艦大和を喪うことになった。その歴史が繰り返されないことを心より願う。2015/05/13

Akio Kudo

2
★★★★★ どうして素晴らしいスクープ、ルポを朝日新聞は記者を守ることなく記事を取り消したのだろうか?ピンチの時こそ信念が必要だが、それが無かったのかもと思う2021/11/02

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