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ニュージーランド エコ紀行

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  • サイズ B6判/ページ数 205p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784822808747
  • NDC分類 297.2
  • Cコード C0095

出版社内容情報

氷河に温泉、ホエールウォッチングにペンギン、ダイビング──。先住民マオリとヨーロッパ系移民が共存し、大自然を活かした観光で経済成長を続けるエコ先進国ニュージーランド。美しい風景やかわいい鳥・動物の写真とともにその持続可能で楽しいエコライフ&エコツアーの魅力に迫る。石川文洋さん推薦!

はじめに

第1章 観光と環境
バイオ燃料で走るツアーの車/カーボン・ニュートラルでバス会社も客もCO2排出の埋め合わせ/エコ・ロッジ、敷地内ですべてまかなう/観光戦略、「持続可能」を掲げて官民一致/自然の観光資源、守ってこそ経済の発展/▼コラム 映画産業/環境憲章で地域ごとに可能な対策/野生生物保護、ツアー代金から費用捻出/▼コラム 海洋保護区

第2章 旅人の木
苗木を買って旅先の環境改善に一役/観光客の増加が町の環境を脅かす/地球サミットや京都議定書もきっかけ/ごみ収集の有料化、リサイクル促進へ/▼コラム 街道のカフェ/観光の環境認証制度に参加/地元業界、自治体、大学の三位一体/リサイクルを促すファッションショー/インターネット利用も後押し/▼ コラム 刑務所の!?宿

第3章 囲って守る
カロリ野生生物保護区/全長8.6キロのフェンスでグルリ/首都の真ん中で/一億七千万円はどこから?/地域のボランティアが支える/500年構想で鳥と原生林の復活/沖縄でもできないだろうか/守るのはヤンバルクイナにとどまらない/▼コラム地下発電所

第4章 離島チャタム
自然保護省の最前線/先住民モリオリの遺跡もある島/森の現場に出発/斜面を上って下って息が切れて/オフィスより戸外の仕事が好き/▼コラム 空を飛ぶ原点/里親作戦の中心人物に会う/移民が連れてきた固有鳥の外敵/別の鳥が抱卵して育てる/島が救命ボートだった/一度失えば戻らない/▼コラム 十五少年漂流記

第5章 奥深いエコツアー
山や川で自己紹介/森で学べる心地よさ/生態を見せるホエールウオッチ/人間がクジラの世界の訪問者/文化と環境を守って成功/▼コラム 誰にもやさしい

第6章 ひろがるマオリの観光
鳥の保護区で歴史や文化を解説/6月の正月、地域あげてイベントに/伝統技能も観光資源、文化の語り部に/山や海で見せる自前の文化/地名で語る先住民の視点/初の全国組織も誕生/▼コラム 条約の地

第7章 再生の島・ティリティリマタンギ島
原生林が70%から23%に激減した国/ボランティアが28万本を植林/助け、助けられ、不思議な縁/やっぱり幸せなんだ。そうは思わないかい?/ボランティア群像/役所から独立した市民たち/育ち続ける次の世代/▼コラム キウイの神話

第8章 観光記念を残しにモトウイヘ島へ
木を植えるなんて、素敵でしょ/多くの人と知り合えて/これであなたも貢献できましたね/楽しみながら、だから長続き/百年ぶりに羽ばたいたサドルバック/▼コラム 家ごと引っ越し/自然回復の模範に

 推定千年ほど前に先住民マオリが住みつき、一九世紀後半からはヨーロッパ人の本格的な入植が始まったニュージーランド。推定一億年前にゴンドワナ大陸から分離したことで独特の生物相、植物相を保ち続けてきた長い期間からすれば、ほんの一瞬とも言える短期間で、その自然に深刻な影響をもたらしてしまった苦い歴史をもつ。
 牧場を始めるため森を切り開き、牧草地を一気に拡大した一方で、豊かな島の固有の鳥が生息地を奪われ、中には絶滅してしまった鳥もいる。そういう不幸な歴史を顧みて、元に戻そうという試みが各地で始まっており、モトウイヘも、そのほんの一例だ。
 人類が地球上を移動して開発も進めた歴史をふりかえりつつ、地球のあちこちに思いを馳せてみると、同様な過ちはニュージーランドに限らないことに気がつく。もっとひどい国のほうが多いだろう。日本でも例えば、沖縄でその実例がたくさんあり、いまも悪い方に進行中だ。
 「開発が悪いのではありません。経済を活性化し、生活を豊かにしてくれます。やりすぎがいけないのであって、バランスが大事なのです」。ニュージーランドの観光地で何度も聞いた。
 「良好な環境を次の世代に残す、と言いますが、それは間違いであり、おこがましい。環境と言うのは、私たちが将来の世代から借りているものなのです」。マオリに教わったことだ。
 こうした目で見ると、モトウイヘ島はじめ、これまで紹介してきたニュージーランド各地の試みは、これ以上の自然破壊にストップをかけ、元に戻そうとするお手本なのだと、つくづく思う。二〇〇八年七月、北海道・洞爺湖に世界の首脳が集まっても遠い先の理念でしか一致できなかったことを思うと、地味ながら、とっくに動き出している人々のほうがよっぽど未来に希望と可能性をもたらしてくれそうではないか。
 モトウイヘ島でサドルバックが放たれた日、「きょうは地域の人々の力で自然の回復を成し遂げた模範になりました。どの人にも共通の利益をもたらすことでしょう」と書かれた自然保護省の資料が配られた。
 二〇〇一年から毎年のように訪ねているニュージーランド。そのたびに自然や環境を守ろうとして動いている人々に出会う。

目次

第1章 観光と環境
第2章 旅人の木
第3章 囲って守る
第4章 離島チャタム
第5章 奥深いエコツアー
第6章 ひろがるマオリの観光
第7章 再生の島・ティリティリマタンギ島
第8章 観光記念を残しにモトウイヘ島へ

著者等紹介

青柳光郎[アオヤギミツロウ]
1949年、東京生まれ。1973年、朝日新聞社に入社して、社会部記者に。警察、成田空港、気象庁、国会などを担当したのち社会部デスク、総合研究本部主任研究員などを経て、2006年5月、退社。「旅と地球環境」を主な取材テーマとしてジャーナリストを続ける。アジア各地のほか、アイルランド、アメリカなどの取材をしてきた。ニュージーランドは、2001年1月、花づくり農家を通して日常の暮らしや社会の様子を紹介する記事を『朝日新聞』日曜版に書いて以来、毎年のように訪ね、観光と環境保全、先住民文化など様々な切り口で紹介している。『沖縄タイムス』でもたびたび執筆している。04年11月から『朝日新聞』のインターネット情報版「asahi.com」でコラム「旅たび愛ランド」を連載。朝日カルチャーセンターなどで講演活動もしている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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