ファーマゲドン―安い肉の本当のコスト

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ファーマゲドン―安い肉の本当のコスト

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  • サイズ B6判/ページ数 493p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784822250744
  • NDC分類 610.4
  • Cコード C0034

出版社内容情報

まるで工場のような家畜飼育、養殖、穀類・豆の単一栽培……。
一見すると、安価な食料を効率的に大量生産する素晴らしい手段のように見える。
しかし、現実はまったく逆だ。現代的集約農業は、公害をまき散らし、生態系を乱し、貧困層を拡大する。
その先に待ち構えているのは、ファーマゲドン(農業がもたらすハルマゲドン)だ。

私たちは、自分が口にする食べ物についてあまりにも知らされていない。 抗生物質、ホルモン剤にまみれ、不健康に育った肉や魚が安く売られている事実を知ったとき、今後も同じように食べ続けるだろうか。工業型農業が生み出す安い食料が人々の健康と環境を蝕んでいる実態に迫ったのが本書だ。

工業型農業、すなわち動物を飼い、土地を耕すというデリケートな仕事を、機械の部品やゴムタイヤの製造のようにこなす農業が、安い肉を生産する唯一の方法なのだろうか。この考え方は、広く浸透し、長い間、疑う余地のないこととして信じられてきた。政府も、消費者が鶏肉を2ポンドで買える環境を大急ぎで整えた。それが誰にとってもいいことだと信じて。しかし、安い肉がどうやって作られているかは、隠されたままだった。本書では、食料供給よりも利益を優先したために生じた、思いがけない結果について探っていく。国民に食料を供給 するためよかれと思って始められたことが、なぜこれほど間違った方向に進んてしまったのか。

1962年、レイチェル・カーソンは著書『沈黙の春』で、農業が新たに取り入れた工業的手法、特に空からの農薬散布の影響にスポットライトを当て、食料と田園地帯が直面する危機について警鐘を鳴らした。本書は、現代版の『沈黙の春』である。農業、畜産、漁業の工業化が食品汚染、環境汚染、そして種の絶滅を招き、近い将来、破滅的状況(ファーマゲドン)を引き起こすというのが著者の考えだ。 かつて田園地帯では、多様な作物と家畜を育てる混合農業が見られたものだが、今やそれは過去のものとなり、ただ一種の作物あるいは家畜だけを育てる単モ ノカルチャー式農法に取って代わられた。もはや農業に自然との調和は求められなくなった。同じ作物を同じ畑で何度も繰り返し栽培する。土壌がくたびれたら、化学肥料を投入して早々に回復させる。厄介な雑草や害虫は、除草剤や殺虫剤を大量に散布して排除する。家畜は農場から姿を消し、工場さながらの家畜小屋に詰め込まれ、それらの肥やしに変わって化学肥料が、畑や果樹園の疲れた土壌を無理やり再生させるようになった。次第に、かつてない農業の手法が語られるようになった――工場の生産ラインのような飼育方法である。本書では、食料供給において利益を最優先したために生じた、思いがけない結果について検証するとともに、消費者としてどのように行動すべきかを提示する。

日本語版序文
PARTI 厳しい現実 第1章 カリフォルニア・ガールズ――これが未来か?
第2章 くちばしでつつく――ラベルに隠された真実
PARTII 自然
第3章 沈黙の春――農薬時代の始まり
第4章 野生生物――大いなる喪失
第5章 魚――農業が海洋資源を奪う
第6章 アニマルケア――獣医に何が起きたか
PARTIII 健康
第7章 無数の抗生剤――公衆衛生上の脅威
第8章 太くなるウエスト――食品の質の低下 PARTIV 汚物
第9章 豚みたいに幸せ――汚染の話
第10章 南部の苦しみ――工場式養鶏の出現
PARTV 縮みゆく惑星
第11章 土地――工場式農場がいかに多くの土地を必要とするか
第12章 水より濃い――枯れる川、湖、井戸
第13章 100ドルのハンバーガー――安い食物という錯覚
PARTVI 未来のメニュー
第14章 遺伝子組み換え――人の食料とするか、工場式農場の餌とするか
第15章 中国――毛沢東の巨大畜産工場が実現
第16章 国王、庶民、そして企業――力のありか
第17章 新しい材料――食物について再考する
第18章 解決策――迫り来る食料危機をどう回避するか
第19章 消費者パワー――あなたにできること
エピローグ

【著者紹介】
家畜の福祉向上を牽引する国際的な慈善団体、コンパッション・イン・ワールド・ファーミング(Compassion in World Farming、世界の家畜に思いやりを)の最高経営責任者。工業化された農業の影響について傑出した意見を述べてきた。彼のリーダーシップのもと、コンパッションは、英紙オブザーバーが主催する「オブザーバー・エシカル・アワード・フォー・キャンぺーナー・オブ・ザ・イヤー(最もすぐれた倫理的活動をした団体を讚える賞)」や、BBCRadio4の「フード・アンド・ファーミング・アワーズ・フォー・ベスト・キャンペーナー・アンド・エデュケーター(食料・農業分野のすぐれた活動家と教育者を讚える賞)」など、数々の賞を受賞した。生涯を通じて野生生物を愛しており、妻と養子の息子とハンプシャーの田舎に暮らしている。

内容説明

まるで工場のような家畜飼育、養殖、穀類・豆の単一栽培―。一見すると、安価な食料を効率的に大量生産する素晴らしい手段のように見える。しかし、現実はまったく逆だ。現代的集約農業は、公害をまき散らし、生態系を乱し、貧困層を拡大する。その先に待ち構えているのは、ファーマゲドン(農業がもたらすハルマゲドン)だ。

目次

1 厳しい現実(カリフォルニア・ガールズ―これが未来か?;くちばしでつつく―ラベルに隠された真実)
2 自然(沈黙の春―農薬時代の始まり;野生生物―大いなる喪失;魚―農業が海洋資源を奪う;アニマルケア―獣医に何が起きたか)
3 健康(無数の抗生剤―公衆衛生上の脅威;太くなるウエスト―食品の質の低下)
4 汚物(豚みたいに幸せ―汚染の話;南部の苦しみ―工場式養鶏の出現)
5 縮みゆく惑星(土地―工場式農場がいかに多くの土地を必要とするか;水より濃い―枯れる川、湖、井戸;100ドルのハンバーガー―安い食物という錯覚)
6 未来のメニュー(遺伝子組み換え―人の食料とするか、工場式農場の餌とするか;中国―毛沢東の巨大畜産工場が実現;国王、庶民、そして企業―力のありか;新しい材料―食物について再考する;解決策―迫り来る食料危機をどう回避するか;消費者パワー―あなたにできること)

著者等紹介

リンベリー,フィリップ[リンベリー,フィリップ] [Lymbery,Philip]
家畜の福祉向上を牽引する国際的な慈善団体、コンパッション・イン・ワールド・ファーミング(Compassion in World Farming、世界の家畜に思いやりを)の最高経営責任者。コンパッションは、英紙オブザーバーが主催する「オブザーバー・エシカル・アワード・フォー・キャンペーナー・オブ・ザ・イヤー(最もすぐれた倫理的活動をした団体を讃える賞)」や、BBC Radio4の「フード・アンド・ファーミング・アワーズ・フォー・ベスト・キャンペーナー・アンド・エデュケーター(食料・農業分野のすぐれた活動家と教育者を讃える賞)」など、数々の賞を受賞した

オークショット,イザベル[オークショット,イザベル] [Oakeshott,Isabel]
サンデー・タイムズ紙の政治部記者。BBCのテレビやラジオ、スカイニュースなど多数のチャンネルで政治コメンテーターを務める。2012年、英国プレス・アワード(報道賞)の「その年のすぐれた政治ジャーナリスト」に選ばれる。ウエストミンスターでの取材を許される下院公認の政治記者。夫と3人の幼い子どもとコッツウォルズに暮らしている

野中香方子[ノナカキョウコ]
翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬弐仟縁

35
2014年初出。集約農業がもたらす大量廃棄物と高脂肪で低品質の肉を熟知すれば、そのシステムは正しいのかと再考する気になる(19頁)。3000万羽の卵用鶏を飼育する台湾でみた光景は、空きスペースは残らない。餌と水のみ(58頁)。これが大量生産の現場か。動物福祉の観点からするとどうなのかな? ハチの減少:農薬まみれの単一栽培を行う工業型農業のせいで、生息地を奪われ、駆逐された(93頁)。獣医や農場主は、工業型農業システムで犠牲者となる。低賃金、大量生産を強いられる(170頁~)。2015/12/22

たまきら

29
家畜の福祉、という一見矛盾に感じる活動家が、「安い肉は動物だけではなく、従事者、消費者、環境までもを虐待している」という現実を世界各国の現場をみて(あるいは見ることを拒否されて)報告している内容です。冒頭がいきなり「岩手の観光牧場(小岩井ですよね)」から始まり、なんだか身近です。ミツバチも家畜なためかなりの紙面が提供されており、CCDの主要原因がネオニコチノイドであることが簡潔に記されていた。決して「菜食」を推薦はしておらず、逆に安全な肉の求め方を紹介している末尾がありがたかった。2018/04/11

Sakie

20
この厚さは読む者に覚悟を問う。辛辣な表現への安易な同調は避けたくも、余りに絶望的な現実に途方に暮れる。ファーマゲドンとは、ファーム+ハルマゲドンの造語だ。大戦後、人間は食糧である農畜産物に「効率」を求め、自然との調和や自然への敬意を欠くようになった。結果生まれた工業型農業は搾取の連鎖だ。環境を壊し、動物福祉を損ない、人間の健康を害し奪い、生産効率が下がる実例が並ぶ。“持続可能な集約化” などないとの結論に私も同意する。経済を最優先したシステムは人間も動物も不幸にする。今後必要なのは集約ではなく分散だろう。2018/10/25

Kazehikanai

20
工業型畜産が我々の社会の持続可能性を脅かしている。環境破壊、動物虐待、貧困問題など、その害悪を取材しながら運動してきた著者の危機感が乗り移る。人間の利益のために、自然の摂理に反して過剰に太らせた動物、そのために犠牲になる多数の人間と環境、食べられるために生きる動物たちの福祉、何も知らされずに広がる食肉文化。矛盾を多数はらんだ人間の行いに当惑する。解決策は消費者の行動にあるだろうが、そこにも人間の自己満足や矛盾が含まれているように思える。そんなことを考えつつ、でも今はひとまずビッグマックを食べたい。2016/03/12

もりやまたけよし

12
言いたいことはシンプルに工業化された農業の現状批判だ。このことをあまりに膨大な量の取材記事でなぞるばかりなので、途中で疲れ果ててしまう。正義を振りかざす刀に切られまくった感じがして、少しうんざりした。日本人の感覚としては少し違和感があるのは、欧米の人間の農業さえ工業化するというドラスティックな発想だろうか。自然と調和して生きることを、肌で感じれない人たちには、悲壮感が漂う。2016/10/21

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