出版社内容情報
本書は、ユーロ危機に揺れ続けるヨーロッパの中で独り絶好調のドイツの秘密を解き明かす。
2003年3月14日、ドイツ連邦議会の本会議場でゲアハルト・シュレーダー首相が演説した。
「我々は、(社会保険制度による)国家のサービスを減らさなくてはならない。そして、市民が今よりも自分について責任を持つことを奨励し、1人1人の自己負担を高めなければならない」
この演説がドイツの停滞を打ち破る号砲となった。戦後最大の構造改革プログラム「アゲンダ2010」は、雇用市場と失業保険制度の改革、公的年金制度の改革、公的健康保険制度の改革、賃金協定の柔軟化、減税の5つの柱を掲げた。
社会民主党の支持基盤である労働組合の既得権益を削る大改革は、10年後のメルケル時代に実を結び、ドイツ経済は復活した。ユーロ危機の最中でも、ドイツ経済だけは独り勝ちだった。
だが、シュレーダー政権は改革を実行したがゆえに選挙で大敗し、シュレーダー自身は政界引退に追い込まれた。身を捨てて大改革を実行した「ドイツ中興の祖」シュレーダーの改革のプロセスを丹念に追った。
著者はNHKの記者を辞め、ドイツ・ミュンヘンに20年以上住んでいるジャーナリスト。前著『なぜメルケルは「転向」したのか』では、原発・エネルギーをめぐるにドイツの長い「熟議」を描いた。本書は、ドイツ復活の秘密を解き明かす。
第1章 戦後最大の社会保障改革
第2章 極貧家庭から首相に
第3章「欧州の病人」ドイツ
第4章「アゲンダ2010」はドイツをどう変えたか
第5章 「欧州の病人」が、「欧州の機関車」に
第6章労働コストの抑制
第7章「アゲンダ2010」の光と影
第8章 シュレーダーの黄昏
第9章 国論を二分する「アゲンダ2010」第10章ドイツ人と社会市場経済
第11章 日本とドイツ
【著者紹介】
ミュンヘン在住ジャーナリスト。1959年生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局時代にベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からフリー。著書に『なぜメルケルは「転向」したのか』(日経BP)、『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研)、『あっぱれ技術大国ドイツ』(新潮社)など。
内容説明
10年後に実を結んだ「労働コスト」削減。「嫌われても、実行あるのみ」改革をやり遂げ、その挙句、政界を「追放」された男の物語。
目次
第1章 社会保障を削った男
第2章 どん底に転落したドイツ
第3章 フォルクスワーゲン取締役ペーター・ハルツ
第4章 ドイツ経済、再浮上
第5章 改革が深刻化させたワーキングプア問題
第6章 政治家シュレーダーの実像
第7章 社会的市場経済という思想
著者等紹介
熊谷徹[クマガイトオル]
1959年生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。ユーロ危機、欧州の政治経済、安全保障問題などをテーマに執筆している。著書に『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研、2007年度平和・協同ジャーナリズム奨励賞受賞作)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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