出版社内容情報
2000年3月、日本長期信用銀行の会長、社長兼CEOに就任する著者が、エッソ、シティバンクでの経験をもとに、経営の全般について語ったマネジメント原論。青山学院大学の大学院MBAコースでの18時間に及ぶ集中講義を再録。日本で数少ない経営のプロを自認する著者が、日本企業の再生のポイントを社会人学生との討議の中で熱く語っている。社外取締役を導入する、人事評価を徹底するなど、具体的な解決策と同時に、経営に論理を、と訴える。
第1日 エクソン、シティバンクは危機をどう乗り切ったか
1 グローバリゼーション
規制のきかない金融の世界/キャッシュ・マネジメント・アカウント
2 遅すぎる問題処理
消える銀行と不良債権処理/下げつづけた不動産市場
3 ジョン・リードの問題処理
「自分は大失敗した」/シティのバランスシート
漢方薬では遅すぎる
4 大合併の時代
ブームの背景/巨大銀行の誕生/石油業界の再編
エクソン・モービルの誕生
5 エクソンの歴史
独禁法による企業分割/同意審決/エッソとモービル
6 エクソンの危機対応
カトリック教会/一回目の危機対策/増産計画の抑制
刺身とビフテキ/資源枯渇への備え/LIFOとFIFO
バブルの最中の知恵/優先順位は利益性/アメリカ流人員削減
年金の計算/指名解雇をどう実施するか
7 躊躇する日本の経営者に
経営者は寂しい/悪い年ほどストックオプションを増やせ
■質疑応答
リエンジニアリングの失敗は/エクソンの経験をシティで生かす
やってはいけないこと
8 シティバンクの危機対応①
タクスフォースと「血判状」/アメリカの銀行監督
メモランダム・オブ・アンダスタンディング
ファイブ・ポイント・プラン/キャピタル・ベース
コア・ビジネス、カスタマー/公的資金に頼らず
顕著に回復した株価
9 シティバンクの危機対応②
リスク管理の土壌/焦げ付き経験の有無
キャメル方式とは/キャメルのMはマネジメント
トップが承認しなければ・Eは収益、Lは流動性
当たり前のことを実行する/リカバリーからストラテジーへ
大きな方向転換/お客のニーズを聞く/ブランド・エクイティ
■質疑応答
「偉い人」をつくるな/トップから交代を
ゼネラル・マネジャーの仕事/共通語はバッド・イングリッシュ
第2日 取締役会をどう変えるか
1 弁護士とロイヤーの違い/企業内弁護士の存在/タックス・ロイヤー
重要なプロジェクトへの参加/法律違反を回避する方法
2 バブルの責任論について
倫理観の問題ではない/問題はシステム/どう実行するか
3 プランニングについて
シェルのシナリオ・プランニング/シティの方式
■質疑応答
コンサルタントの使い方/知恵にお金を出さない
4 債権大国も自慢にならない
債権大国の実像/滞留するマネー/海外投資のリターン
ジャパニーズ・マネジメント/「シティさん、全銀協に入りませんか」
消費者のパワー/「成功を祈ります」/出戻りも当たり前
5 利益率について考える
競争の変化/ROE、ROCE、EVA/ROTA
シャット・ダウンの経済学/キャッシュフロー会計
6 取締役会をどう機能させるか
監査役は閑散役/社外取締役制度の導入/「社会の良心を入れろ」
経営陣と取締役の峻別/日本型執行役員制度はまやかし
監査委員会の機能/内部監査の報告/人事報酬委員会の役割
CEOの辞めさせ方/役員報酬の決め方/スコア・カード
7 エクソンの企業統治
各種委員会の役割
■質疑応答
社外取締役をどう選ぶか/社外取締役をどう評価するか
報酬よりも名誉/五〇代半ばで就任
英国の改革/悪いボードの例
8 ステークホルダーとシェアホルダー
だれもが不満
■質疑応答
もの言わぬ取締役に無言の圧力/取締役会はセレモニーではない
評価はベル形曲線で
第3日 株主資本主義とは何か
■質疑応答
1 邦銀の値段
低い利益率/リスク評価/もっと頭を使え
お雇い外国人の導入/磨けば光る
2 現地法人のガバナンス
現地法人の場合/親会社との関係
現地採用という言葉はない/給与の話
アメリカ人は三倍
3 人口減少、高齢化、年金
英国と移民問題/高齢化が産業を変える
未積み立て債務は八〇兆円/アメリカ企業の対応
株価の資金調達/401k/個人資産に日米差
4 シェアホルダー資本主義
株式市場の構造/なぜシェアホルダーが大事か
企業を変えるパワー?/優良銘柄
5 人事、人材開発
人事評価について/早く見極める/評価のポイント
評価の評価/幹部をどう育てるか/公平なエクソンの方式
6 サラリーの決め方
エクソンは年功序列的
■質疑応答
給与体系はどうか/評価のフィードバック
評価に差をつける/敗者復活戦/同期入社の処遇
ある日、部下が上司に/だれを社長にするか
一〇万人から四〇人を選ぶ
7 MBAの効用
管理職の訓練/MBAの使い方
異業種経験を重視
8 人材抜擢法
第4日 企業を変える
1 議論の前提
講義のまとめ/変化への対応/ジョン・リードの決断
日産の改革
2 社会人学生の問題意識
論点その1・借り物の民主主義
論点その2・プロフェッショナルの不在
論点その3・隣りを気にする
コメントその1・マネジメント・バイ・ポジションの問題
経営企画の仕事/社会主義的
コメントその2・「みんな敗者」の資本主義
ガービンの話
コメントその3・リースマンの指摘
やはり社外取締役/業界団体の存在
コメントその4・広報の機能と役割
ロビイストの役割/エクソン、シティの不祥事処理
サービス・エクセレンス
論点その4・マーケットシェア至上主義
コメントその5・利益のあるシェア
利益を生まない付加価値
論点その5・個の自立を促す仕組み
戦略なきチームワーク
コメントその6・ロジカルに考える
3 解決の具体策を考える
対策その1・プロフェッショナルの中途採用
対策その2・ジョブ・ポスティングの実施
対策その3・能力給の徹底
■総括・制度の問題
女性をどう使うか/ジョブ・ポスティング
採用は慎重に
対策その4・役員報酬の増額
■総括・すべてはCEO次第
二期四年では/社員からの直訴
経営を評価する仕組み
対策その5・株主総会、子会社を変える
改革派に期待しても
■総括・持ち株会社のメリット
プロ株主対策/執行役員こそ偉い
対策その6・教育を変える
途上国の留学を
■総括・形ではなく中身を変える
地位を与えたら権限も/形式主義の弊害
シティでの話し合い/他人から学ぶ
第5日 グローバリゼーションを理解する
■質疑応答
1 責任のとり方
機関投資家はものを言え
2 新規投資の判断基準
市場のニーズを見極める/シティでの経験
わずか半年で/Eコマース、Eビジネス
経済性の判断/石油採掘のケース
ウインドウズ・オブ・リスク/アジア危機とリスク
3 情報技術に対する認識
ジョン・リードの考え/社長も生存競争にさらされる
合併の理由/金融はテクノロジーで決まる
4 グローバリゼーション六つの潮流
金融自由化が契機/メリルの攻勢/英国のビッグバン
為替取引の飛躍的拡大/メイド・イン・グローバリー
銀行も差別化が必要/不便なクレジットカード
シンガポールに移す/ITの効用/進む制度の国際標準化
10Q/バフェットの投資哲学/インターネットと英語
わかったふりは危険/いまが一番忙しい
内容説明
経営のプロフェッショナルが語り下ろすMBAのためのマネジメント原論。エクソンからシティバンク、シティから新生・長銀トップへ。いま最も注目される経営者の18時間に及ぶ白熱の講義の全容。
目次
第1日 エクソン、シティバンクは危機をどう乗り切ったか
第2日 取締役会をどう変えるか
第3日 株主資本主義とは何か
第4日 企業を変える
第5日 グローバリゼーションを理解する