内容説明
萩原恭次郎の第一詩集『死刑宣告』の初版本を底本に、文字組み、図版、レイアウトなどをできるだけ底本に忠実に再現した。文字は、仮名遣いを底本通りとし、漢字は新字体に改めた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリリン
27
独特の文体だが、第一回メーデー・関東大震災・日本共産党結成・事案維持法交付...当時の歴史的背景を感じた。故に、動乱を生気抜いた様が作者の言葉から伝わってくる。...煙は 何故この美しい空を 残虐で黒焦げにするのか... 非力への虐殺 まさに時代背景が書かせた作品ではあるものの萩原恭二郎にしか書けない独特の世界を感じた。 図書館で借りた全集より、萩原恭二郎の『死刑宣告』のみ読んだので、本書で登録したが、手元に置きじっくり読んだら、また違う面が見えてくるかもしれない。2019/03/26
SIGERU
6
萩原恭次郎の処女詩集「死刑宣告」を、大正末年当時の装丁そのままの復刻版で読んだ。装丁や挿画が凝りに凝っており、書物自体がアヴァンギャルド美術としても成立するほどの完成度をみせている。「日比谷」「ラスコーリニコフ」等においては、文字や記号を抽象画のように按配して動的な効果を生み出そうとしており、詩と装丁のコラボレーションによりある種のトータル性を実現してみせた詩集としても画期的。恭次郎自身による序と、装丁を担当した盟友岡田龍男の跋文がひたすら攻撃的で、若き芸術家たちの熱気と稚気愛すべし。2017/07/29
デコボコ
6
散文詩っぽい序文が一番好きです。「一廻転毎に、豊富に微細に鋭敏に、伸縮発熱の度激しき最大無限のまたかかる虚無にまで、到達せんとする廻転!廻転!この廻転の止む時に私の生命は死である。この廻転の軌道を外れた時に骸は横はる。」https://ja.wikisource.org/wiki/死刑宣告#.E7.9B.AE.E6.AC.A1 で、全文読めます。2015/07/03
白米
4
まさに「ブラボー進め/突け!!!!!!!!!!/恭次郎」 といった感じの詩集である。凄まじい熱量。何よりレイアウトが異常だ。どの向きでどの順番で読むのが正しいのか分からないページもある。それがまた愉しい。2019/11/26
あかふく
3
一貫して回転のイメージがある。それは単純にこの本自体が多数の方向を持っているために回転するということでもあるが、その回転とは生命の運動の一つの重要な要素であるからでもあるだろう(「回転の止む時に私の生命は死である。」またベイトソンなど参照)。頻出する墓場や分裂した身体のイメージ、そして直接的な死への言及、タイトル『死刑宣告』は平面への死刑を逆説的に示しているのだろうか。明らかに萩原恭次郎は自らを一部と規定するが、そういった環境の中にある生命の見方即ち世界の多様性を認めようとする姿勢は間違いなく「愛」だ。2014/08/19