出版社内容情報
『象徴形式の哲学』や『人間』等で著名な20世紀哲学の巨匠が、「自然・認識」
問題を基底に据えて個性的統一体としてのルネサンス哲学の全体像を描き出し
た名著。多様で複雑なルネサンス哲学の構造と展開が、時代の精神史的・文化
史的文脈に位置づけ浮彫りにされている。
内容説明
本書は、ルネンサンスにおける「自然―認識」問題を核に、宗教や芸術、占星術や魔術といった広汎な精神的・文化的問題連関を統一的に把握し、ルネサンス思想の多様な展開を、壮大なスケールと精緻な観察をもって解明した。本書は、今世紀の古典として、揺るぎない価値を主張しうるであろう。
目次
第1章 ニコラウス・クザーヌス
第2章 クザーヌスとイタリア
第3章 ルネサンス哲学における自由と必然
第4章 ルネサンス哲学における主観―客観―問題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
6
ヴァールブルク60歳の誕生日の献辞を掲げる本書は、彼との出会いによって以前著者が『認識問題』で探求したミクロコスモス/個人とマクロコスモス/宇宙の関係の哲学史での変容と個人や自然の創出を、ルネサンスの文化と科学から再考する。クザーヌスでの、個別的人間が自らと世界を「照明」する際に参照された普遍的神=宇宙との比例的関係から、ブルーノの新プラトン主義的「流出」(後者が前者に流れ込む)への変容は、ダ・ヴィンチ、ケプラー、ガリレオらに見られる数学知と技術知の交通や占星術や魔術の経験科学への転換の中で浮かび上がる。2019/05/02
takuyak56
1
【メモ】ボヴィルス(1475-1566)は、存在、生、感覚、知解の四つが「存在が自ら向かいそれ自身の概念へと到達するための異なる段階である」(111)とする。最下の存在は、石や植物、人間にも属する単一の実体である。人間の主観的生、理性は、この単一の実体を基盤とする諸段階のひとつである。人間における理性によって自然はそれ自身の内に帰還する。しかし、帰還した自然はもはや出発と同じ形姿ではない。人間は無垢なる単純な自然に立ち戻ることはできず、人間的本質としての統一を見出すべく、対立を通り抜けなければならない。2018/10/23