明六社の人びと

明六社の人びと

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  • サイズ B6判/ページ数 246p/高さ 20X14cm
  • 商品コード 9784806756903
  • NDC分類 061
  • Cコード C0021

出版社内容情報

森有礼、福沢諭吉、西村茂樹、加藤弘之、西周、津田真道、杉亨二、箕作秋坪等々……西洋の近代思想、文化、制度を学んだ当時の代表的な知識人は明六社に参集した。本書では、その明六社の軌跡をたどることにより、近代化への葛藤を描き出す。  ★★★朝日新聞評=新鮮な明治の知識人像。★★★京都新聞評=明六社という近代社会建設のための稀有な試みと模索の過程を、森有礼と福沢諭吉という相対立する個性を中心に詳細に描き、その全業績を歴史の中に明確に位置付けた労作である。★★★  ●●●「はじめに」より=幕末維新期において西洋流の学者=洋学者たちは、新しい進取の知識を取り入れることにおいて当時を代表する知識人であった。変革の時代において、リーダーたちは豊かな個性と指導力をもち、それは実践に移されることによって、時として英雄的行為となった。歴史の転換期にはそうした個性が時代をリードすることが多い。明六社の人びともまた幕末期の変革に際して、その個性を存分に発揮して進取の学問=洋楽を修め、また、なかには実際に欧米に留学してすでに海外での生活体験をつんだ者もあった。しかも、彼らは欧米にはその豊かな個性が結集する「ソサエチー(Society)」の存在することを知ったのである。この国においては有徳人、知徳人そして学者と呼称された人びとは、おもに儒教、儒学を素養としてもった儒者・儒官であり、いわば官製の知識人であった。そうした素地のうえに、さらに洋学に学んで外国に目を配ることによって、新しい時代の先覚者として西洋流の学者=知識人が登場してきたのである。「都下の名家」たちを主要な構成員とする集団としての明六社は、こうした時代の転換期に遭遇した個性豊かな洋学者の集まりであった。それはいまだ多分に日本的な個が結集して、進取の知識である「ソサエチー(Society)」の形成を試みたものである。さまざまに個性豊かな個の集合は、ひとつの集合体を超える集団としてそれ自体自律的な個性をもつ。それゆえに、ここで試みようとしているのは、いわば集団の伝記であり、今様にいえばひとつの「集団の社会史」である。この国では長い間いわゆるタテ社会の特徴として身分的な上下の結合原理が重んじられ、いわばヨコに連帯する集団の形成が難しかったように思われる。それゆえに、こうした集団を扱った研究事例をあまりみない。ここにいわば歴史的伝記的手法によって集団としての明六社の活動軌跡を辿ってみたい。また、そうすることによって、実は森有礼と福沢諭吉を中心にした維新期の豊かな個性を逆照射しようとするのが小論での試みである。●●●  【主要目次】▲▲第1章・Societyの構想=森有礼の学術文社中--明六社設立の発端/森有礼の洋行/アメリカでの森有礼/明六社設立の端緒/社則の制定/「個」の結合を律するもの--「制規」の制定と指針/社則制定の準備/明六社制規/明六社の社長  ▲▲第2章・学者、知識人の役割---福沢の「学者職分論」をめぐって=福沢の「学問のすヽめ」/学者職分論/学者の役割/福沢の私立為業/福沢の意図/明六社の論評/投書欄の論評/明六社の人びと  ▲▲第3章・集団としての活動と個人=一年目の活動と成果/月二回の定例会/演説の仕法/定例会の参席者/聴問切手の発行/森社長の発言/明六雑誌の出版/役員改選と制規改定/社長廃止と会幹の設置/「八年版」制規/五月一日「明六社会談話筆記」/西村茂樹の「自由」/加藤弘之の「自由」/福沢諭吉の「自由」/森有礼の発言/福沢の「国権可分之説」/投書欄から  ▲▲第4章・福沢諭吉の執筆活動と明六社---「文明論」の成稿に関連して=「文明論」の執筆過程/福沢の知徳論/内地旅行論/男女同数論/三田演説会/福沢の「民権」  ▲▲第5章・外圧としての言論出版統制=新聞紙条例と讒謗律/初期の言論統制/統制強化の気運/讒謗律の発令/統制の影響/明六雑誌への影響/民撰議院論争と明六社の人びと/「建言書」の論理/加藤弘之の疑問/馬城臺二郎の主張/森有礼の疑念/西周と加藤弘之の発言/西村茂樹の論説/津田真道の「政論」/その他の意見  ▲▲第6章・集団の自己規制から終焉へ=福沢の出版停止「議案」提出/出版停止の「議案」/「議案」の論理/福沢の仮想世評/明六社の消散と末路/「議案」可決後の定例会/演説の中止/その後の明六社/明六会への移行/東京学士会院の設立/福沢諭吉の退院  ▲▲第7章・明六雑誌の伝播と読者層---都市民権から地方民権へ=明六雑誌の販売/予約購読制の採用/郵便制度の普及/売弘所の役割/丸屋商社の創業/明六雑誌の伝播/投書欄にみる読者/読者層の形成/地方の読者/おわりに/福沢の人間交際/交際の観念/集団と個の関係/自律的な個の成立

内容説明

森有礼、福沢諭吉、西村茂樹、加藤弘之、西周、津田真道、中村正直、杉亨二、箕作秋坪等々…、西洋の近代思想、文化、制度を学んだ当時の代表的な知識人は、明六社に参集した。本書は、その明六社の軌跡をたどることにより、近代化のテーマとしての〈個〉と〈集団〉の問題とそこに生じた葛藤を、彼らの言動を通じて鮮かに描き出した。

目次

1 Societyの構想(森有礼の学術文社中―明六社設立の発端;〈個〉の結合を律するもの―『制規』の制定と指針)
2 学者・知識人の役割―福沢の「学者職分論」をめぐって
3 〈集団〉としての活動と個人(1年目の活動と成果;役員改選と制規改定;5月1日「明六社会端話筆記」)
4 福沢諭吉の執肇活動と明六社―『文明論』の成稿に関連して
5 外圧としての言論出版統制(新聞紙条例と讒謗律;民撰議院論争と明六社の人びと)
6 〈集団〉の自己規制から終焉へ(福沢の出版停止『議案』提出;明六社の消散と末路)
7 明六雑誌の伝播と読者層―都市民権から地方民権へ