出版社内容情報
「日本らしい自然」を築き、親しみ、利用してきた。雑草の生活様式、拡大戦略、再生のメカニズムや雑草社会の仕組みを解き明かす。
雑草は、多様な種類が互いに関係しあいながら、社会を築いている。
古来、日本人は雑草社会と深くかかわることで、
「日本らしい自然」を築き、親しみ、利用してきた。
雑草の生活様式、拡大戦略、再生のメカニズムや
雑草社会の仕組みを解き明かし、
河川堤防や街中で行われている、
「日本らしい自然」再生プロジェクトを紹介する。
はじめに
第1章 日本人と雑草
1 「日本らしい自然」とは
二つの自然/雑草社会はどこで成立するか/半自然と日本らしい景色
2 和辻哲郎の風土論と日本的景観
世界の三つの風土と景観/連続性にある日本の景観の特色
3 日本人の雑草観
雑草天国・日本/日本人が雑草からイメージすること/弥生時代以前から中世までの雑草観/江戸時代の食糧増産作戦と雑草/研究の対象にならなかった雑草/大人と子どもの雑草観
4 都市の緑と野草花壇
日本の都市の緑の現状/東京の真ん中につくった野草花壇/世界の趨勢は日本古来の植生
5 雑草の広がり方で変わるイメージ
第2章 人とともに生きのびてきた雑草たち
1 雑草の進化の足どりをたどる
嫌われる存在へと進化した雑草/雑草の起源/500種以上ある日本の雑草
2 雑草社会は人間の土地利用や管理をどう受け止めたか
土地利用によって変わる雑草/除草剤によって変化した雑草社会/戦前と戦後の線路脇の雑草たち
3 雑草たちの生活様式
一年生雑草/二年生雑草/多年生雑草
4 雑草たちの繁殖の生態学
長日植物と短日植物/生き残りのための生殖戦略
5 雑草種子の移動と定着
雑草は途方もない数の種子を生産する/大きな種子と小さな種子のメリット・デメリット/種子散布の四つの仕掛け/二次散布に影響するもの
6 休眠と発芽のメカニズム
取っても取っても雑草が生えてくるのはなぜか/休眠する種子/休眠から覚醒するために/土中で生きつづける種子
第3章 雑草社会の仕組みを探る
1 農耕地で生き残るために
2 非農耕地では再生力をつける
多年生雑草の刈り取り後の再生力/ススキ/チガヤ/シバ/ササ類/マメ科/ヒメジョオン、ヨモギ、エゾノギシギシ/一年生雑草の再生力/刈り取りと再生力の関係
3 踏みつけられても焼かれても再生する
踏みつけと再生力/家畜による攪乱/野焼きと焼畑
4 雑草社会のかたち
雑草社会とは/群落を構成する雑草の種類/イネ科タイプと広葉タイプの優占種/草丈の異なる三つのグループ
5 構成員の陣取り戦術
親分雑草の背丈と生育型で変わる多様性/陣地強化型と陣地拡大型/生育型戦術を数値化する
6 雑草社会の移り変わり
移り変わる親分雑草/一次遷移と二次遷移の構成員の違い/攪乱後の裸地の五つのタイプ/適切な雑草社会の管理とは
第4章 どこから来たのか招かれざる緑の客人
1 様変わりする帰化植物とその周辺
変わる河川敷や道路脇の景色/外来種と帰化植物/帰化植物の勢力拡大の過程/環境雑草/ワイルドフラワーの功罪
2 帰化植物の原産地と生態的特性
新帰化植物の出身地/植物の七つの生存戦略/四つの立地条件と帰化植物
3 何が帰化植物の棲み家を広げるのか
ナガミヒナゲシの越冬拡大戦略/雑種タンポポの登場/セイヨウタンポポは在来タンポポを駆逐しない/在来タンポポと雑種タンポポの関係/戦後急速に陣地を拡大したセイタカアワダチソウ/今や栽培禁止、オオキンケイギク/一筋縄ではいかないオオハンゴンソウ
第5章 雑草で再生する日本らしい自然(実践例)
1 雑草の素性をよく知ってから利用する
手っ取り早く雑草の素性を知る方法/雑草が生えていることの効果
2 雑草を抜いて雑草を植える─汐入方式のすすめ
堤防法面の五つの植生/河川堤防の植生に求められる機能/帰化雑草を抜いた跡地に在来種を植える─汐入小学校の実践
3 東日本大震災の復興で日本らしい自然を再生する
身近で誰でも活動できる場所を求めて/被災堤防で始めた七草プロジェクト
4 街中に雑草公園をつくって生物多様性を保全する
おわりに
引用文献
索引
【著者紹介】
1946年、東京生まれ。東北大学大学院農学研究科修了。農学博士。専門は植物生態学。農林水産省農業環境技術研究所、東京農業大学地域環境科学部教授を経て、現在、東京大学大学院農学生命科学研究科・附属生態調和農学機構特任研究員、東京農業大学客員教授。現代の身近な自然は外来雑草(植物)で満ちあふれている。子どものころ、多摩川の土手で見たような「日本らしい自然」の主役であった在来雑草のよさを、多くの人に知ってほしいという思いから、「日本らしい自然」を再生する活動を各地で実施している。趣味は野生植物の観察と栽培。旅先でも通勤途中でもつい植物に目がいってしまう。著書に、『日本らしい自然と多様性』『砂漠化ってなんだろう』(ともに岩波ジュニア新書)、『砂漠化する地球の診断』『雑草たちの陣取り合戦』(ともに小峰書店)、『雑草生態学』(編著、朝倉書店)、『環境保全型農業事典』(共編、丸善)などがある。
内容説明
雑草は、多様な種類が互いに関係しあいながら、社会を築いている。古来、日本人は雑草社会と深くかかわることで、「日本らしい自然」を築き、親しみ、利用してきた。雑草の生活様式、拡大戦略、再生のメカニズムや雑草社会の仕組みを解き明かし、河川堤防や街中で行われている、「日本らしい自然」再生プロジェクトを紹介する。
目次
第1章 日本人と雑草(「日本らしい自然」とは;和辻哲郎の風土論と日本的景観 ほか)
第2章 人とともに生きのびてきた雑草たち(雑草の進化の足どりをたどる;雑草社会は人間の土地利用や管理をどう受け止めたか ほか)
第3章 雑草社会の仕組みを探る(農耕地で生き残るために;非農耕地では再生力をつける ほか)
第4章 どこから来たのか招かれざる緑の客人(様変わりする帰化植物とその周辺;帰化植物の原産地と生態的特性 ほか)
第5章 雑草で再生する日本らしい自然―実践例(雑草の素性をよく知ってから利用する;雑草を抜いて雑草を植える―汐入方式のすすめ ほか)
著者等紹介
根本正之[ネモトマサユキ]
1946年、東京生まれ。東北大学大学院農学研究科修了。農学博士。専門は植物生態学。農林水産省農業環境技術研究所、東京農業大学地域環境科学部教授を経て、東京大学大学院農学生命科学研究科・附属生態調和農学機構特任研究員、東京農業大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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