出版社内容情報
本書の論旨を端的に示すなら、次のような言葉に集約することができます。
「テトラヒドロカンナビノール(THC)はきわめて安全な薬剤である」
THCとはマリファナに含まれる活性成分です。上の言葉について確かめたいという方、また懐疑を抱く方は、ぜひ本書を読んでみてください。本書はまさにこの点を科学的に検証するために捧げられているのです。
では、なぜマリファナをめぐる現状は、かくも複雑で入り組んだ様相を呈しているのでしょうか?それは、マリファナはこれまで道徳問題と同一視され、その使用をめぐる議論が「善VS悪」の構図で描き出されることがあまりにも多かったからです。本書では、マリファナが、暴力衝動や悪というイメージと結びつけられてきた歴史を詳述しています。一般の人々がマリファナについて「理性的」で「科学的」な見方をとることが困難になっているのも、またアメリカの反マリファナ的な国策や、その基軸として機能しているマリファナ禁止法が、1930年前後の同国の禁酒法、19世紀中頃のドイツのコーヒー禁止令同様に不合理である事実がいまひとつ伝わってこないのも、道徳論と巧みに混淆された世間一般のマリファナ観のためであることが解き明かされます。
マリファナの薬効については、これまでにも口づてで数多くの事例が報告されています(邦訳では『マリファナ』グリンスプーンほか著・久保儀明訳・青土社1996、に詳しい)。だが、本書は、これら信頼性に欠け、各国の監督官庁から認可を取りつけるには不十分といえる口づての事例報告を後押しし、昨今のマリファナ論争にいわば駄目を押す形で、臨床試験によって示された事実をもとにマリファナの有効性を実証する労作となっています。大麻には致死量がなく、アルコールやニコチンよりはるかに安全な薬物といえることが、本書を読むとわかります。
近年ではとくに癌やエイズなどの病気の治療を目的とした「医療大麻」が注目されています。また、人間の体内に、大麻に含まれる活性成分専用の受容体が発見され、さらに「体内マリファナ」とも言える内因性のカンナビノイドの分泌も明らかになっています。こうした現状を踏まえた上で、著者はこう結論づけています。
「患者から安全で効果のある薬剤を取り上げる根拠が、はたしてあるのだろうか」
本書の科学的アプローチは何よりマリファナにまつわる無用なレッテルを剥がし、われわれが<マリファナの真実>に近づく大きな足かがりとなってくれることでしょう。
内容説明
マリファナの吸引、是か非か?マリファナ議論に最終ピリオド!あまりに感情的に語られてきたマリファナへの疑問を科学的に徹底分析。
目次
1 マリファナの基礎知識
2 マリファナの薬理学
3 マリファナの影響
4 マリファナの医療利用
5 マリファナは安全か
6 マリファナの娯楽利用
7 これからのマリファナ
著者等紹介
アイヴァーセン,レスリー・L.[アイヴァーセン,レスリーL.][Iversen,Leslie L.]
オックスフォード大学薬学部および、ロンドン・ハマースミス病院にあるインペリアル・カレッジ医科大学臨床薬理学部の客員教授。パノス製薬の創立者でもあり、これまでに数々の単行本、350点以上に上る論文を公表している。英国王立学会特別研究員。米国科学アカデミー外国準会員
伊藤肇[イトウハジメ]
1960年東京に生まれる。1987年早稲田大学大学院修了
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
takao
☆みや☆乱読派
yoshi
いしやま