目次
小暗きに降りくる雪は天よりの白き仮名文字とめどもあらず
ありなしの風に吹かれて片栗の花みないやいやするがに震ふ
雨あとの夕映えあはくさしければさくらはさとく茜にうるむ
ひとすぢに白くつづける韮の花の花踏みてくる秋かと思ふ
やさしかる思ひ立ち返る秋の日に小豆ふつふつ煮てゐたりけり
人ゆかぬ雪の山路をゆかんとしその真白きに踏むをためらふ
堆き落葉干反葉踏みゆくに白き羽毛のひとひらを見つ
亡き母の夢に笑まひてくれしより母の夢見ずなりてしまひぬ
ふるさとの讃岐山脈かなしけれ触るればこはるるごとき水色
秋深む空の蒼さに来しものか茜あきつはわが肩に寄る〔ほか〕