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内容説明
広島への原爆投下によって被爆し、その後数奇な体験を重ねた女性の半生をめぐる表題作をはじめ、傷つけられ、虐げられ、極限状態で苦悩する人々の不条理な姿を幻想的筆致のうちに描き出し、生の淵源をまばゆく照射する13の物語。
著者等紹介
ペレサグア,マリーナ[ペレサグア,マリーナ] [Perezagua,Marina]
1978年、セビリア(スペイン)に生まれる。小説家。ニューヨーク在住
内田吉彦[ウチダヨシヒコ]
1937年、大宮市に生まれる。東京外国語大学スペイン語科卒業。フェリス女学院大学名誉教授。専攻、スペイン、ラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きゅー
12
気持ちがざわざわするような物語が集められている。タイトルにもなっている「リトル・ボーイ」は13歳の時に広島で原爆を体験した女性と偶然知り合った「わたし」の物語。てっきり原爆というモチーフが中心に据えられるのかとおもいきや、そこから意外な方向へストーリーが展開する。どの物語でも、人間どうしのコミュニケーションは阻害されている。夫婦、家族、親子であれ、そこにおける感情の繋がりのなさが基軸となっている。そして少々ホラーで、SF的な物語が多い。「いま、ここ」という土台の脆さが露呈される後味の悪さが印象的だ。2016/12/07
刳森伸一
5
13篇所収の短篇集。本書の中で最も長い表題作はタイトルの通り原爆に関連する物語だが、主題はそこにはなく、あくまでも一人の人間の生き方を追っている。原爆被害の当事者である日本人には中々書けない小説だと思った。表題作を含めて多くの話が、自分の認識していた人生や世界が実は悪夢だったことが分かるといった展開で、ブライアン・エヴンソンの小説を彷彿とさせる。しかし、エヴンソンが主に恐怖を扱っているのに対して、ペレサグアの方がより切実で、弱き人間を丁寧で描いているように感じた。 2017/01/22
AR読書記録
3
シリーズ名なんでしゃあないけど、表題作に「フィクションの楽しみ」はそぐわないつらい。原爆に関しては、いつになってもアメリカの「終戦に必要だった」論が変わることはなさそうな現実を前に、これ以上私が何かを知ったところで何にもならん...という無力感を覚えてしまうのだけれど、それでも日本以外の国で、「日本への謝罪は絶えることのない鼓動でなければならないだろう」と書く人がいる(ちょっとこれ恣意的な抜き出し方ですが)のを知り、またまだいくらでも個々の体験として知られるべき悲劇があることを肝に銘じねばと思う。2016/06/11
田中峰和
1
広島に投下された原爆リトル・ボーイをタイトルと表紙デザインに表現した本書は、終戦後何十年経とうが我々には多くを主張する。夫の実家に寄り付けないスペイン人の語り手は、アパートの隣人Hと知り合いになる。被爆後米国暮らしが長いHと会話は英語だが、互いに母国語ではないので、Hの被爆体験や人生を映像として想像する。被爆により性器を破壊されたHには、もう一つの秘密があった。生まれつきの半陰陽だったHが、子孫を残すのは男としてなのか、女としてなのか。爆弾と胎児の重なるイメージを描くHの体験は、ヒロシマの別の姿を見せる。2016/10/23
mim42
1
駄作と傑作が混じった短編集。 ボルヘスになろうとしてコケているようにもみえるが、コルタサル路線は上手くいっているようだ。2016/07/20